勝納艇庫

 勝納艇庫は、小樽市スポーツ施設の一つで、読んで字の如し競技用ボートの格納倉庫である。隣に会議室等を備えた研修センターがあり、小樽漕艇協会が管理している公共施設である。冬の雪かき作業等、協会員がボランティアで行っている。

 小樽の強いスポーツというと、真っ先に挙げられるのが多くのオリンピアンを輩出しているスキーである。スキーのメッカ小樽の代名詞もある。

 さらにもう一つ、意外と知られていないのだが、小樽港を利用して練習しているボート競技が、小樽ゆかりのチームが何度も全国制覇を達成しているスポーツなのである。オリンピック種目の中でもどちらかというとマイナーな種目に数えられるボート競技であるが、小樽は戦前より全国大会で大活躍していた。

 亡父が転勤で小樽千秋高校(後の小樽工業高校)に赴任してきた時のこと、千秋は何が強いのと父親に聞いたことがあった。というのは、前任校の美唄工業が、バレーボール、サッカー、相撲、山岳で全国大会に出場し、野球も北海高校には破れたが、南北海道で決勝に残っていたので、何も考えずに次の学校もたくさん強いスポーツがあると考えたのだ。

 少し考えた父親は、そういえばボートとスキーが強いかなと答えたのだった。休みの日に父親に連れて行かれた学校で、廊下に飾られた賞杯の数々を眺めた事があった。確かにボート競技での全国、全道大会優勝、入賞のものがたくさん飾られていた。

 後年、樽工は造船科があったのでボートを自前で制作できて、経費を他にかけられるので強いとも聞いたが、真偽のほどはわからない。ただ、北海道の高校で唯一自前でボートを作っていたのは間違いない。

 私が潮陵高校に入学すると、部活紹介でボート部は、かつて戦前の国体にあたる明治神宮大会で5連覇を遂げたこともある名門で・・・、と先輩が語り始めたのだった。生徒手帳巻末には校歌、祝勝歌、第一から第三までの応援歌とともに「漢の高祖」というボート部歌まで掲載されていた。

 いろいろ調べていくと、千秋(工業)、潮陵(小樽中学)のみならず、商業、双葉の女子勢、北海製罐、三馬ゴム、東洋木材の実業団勢も全国制覇しているというのだ。

 ただ、直線距離の取れる港や湖、河川がなければ練習できないボート競技は、昔から小樽、石狩、函館、網走、釧路等の学校にしか部活がなく、地区予選なし直接全道大会という競技人口の少ないスポーツである。

 今はこの艇庫眼前に広がる第二期運河を利用し、潮陵、桜陽、未来創造の高校生と、一般社会人チームが練習に励んでいるという。

(斎藤仁)


※本記事の内容は2020年6月時点の情報に基づいたものです。