昔へ連れ出す花銀通り

「すいません、ここどこなんですか」

夜、サークル終わりに先輩にご飯に誘ってもらった。お店に連れて行ってもらう道中で、こらえきれなくなってこう聞いてしまった。

疑うようにこんなことを聞いたのは、失礼だったと思う。でも、つい口に出してしまうほど、気づいたら私は異質な場所にいた。

そこは花園銀座商店街、通称「花銀通り」という場所だった。先輩が笑いながら、不安そうな私に教えてくれた。

こんなリアクションをしたのも、その場所だけ、雰囲気が全く違っていたからだった。そこは、現存していて、それも生きている昭和の町だった。普通にお店が営業していて、普通にお客さんがいる、ただ、見た目と空気だけ時間が止まっている。

私だけが動揺していたので、孤独感さえ感じるほどだった。テーマパークではないので、世界観に入り込む努力をしなくても、否応なく昔に連れ出される。最初はそこに怖さを感じたが、まるで『千と千尋の神隠し』の街に迷い込んでしまったような不気味さで、わくわくもしていた。

正直、私はレトロが特別好き、というわけではない。しかし、店に入ると、内装もまた昭和のままだが、ほっとする感じがした。昭和のことなんて何も知らないのに、なぜか懐かしく思う。若者のレトロブームの理由がちょっと分かった気がした。そんな風に、気付くことがたくさんある場所だった。

お店の料理やインテリアはオリジナリティに溢れていて、懐かしくもあり新鮮でもあるので飽きない。現代の無機質な風景とは真逆の、観察するほど発見がある場所。そこは自然に会話が弾んだ。

ここがこの町の、さらには小樽の魅力だと思う。前置きとして誤解を恐れずに言うと、小樽は都市として洗練されていないと思う。きつい坂が多すぎるし、古い建物ばかりだし、自然が豊かすぎるし。

しかし、このように色々な要素が入り混じっているからこそ、自分だけの発見が尽きない。だから、小樽の町は歴史が長いのに新鮮な話題が絶えず、人と人とを繋ぐのに長けているのだと思う。

これからも私は魅力を知ってほしい気持ち半分と、仲良くなりたい気持ち半分で小樽の話をするだろう。

(地獄坂下)


※本記事の内容は2022年7月時点の情報に基づいたものです。

写真:眞柄 利香