小樽市公会堂

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 旧小樽区公会堂(小樽市公会堂)を利用して、今年5月10日「春のおたる歴史紀行音楽きこう」という、新たな音楽・フリマ・飲食の複合イベントが開催された。主催は7月多目的広場、8月運河公園で野外音楽イベントを開催している浅草橋オールディーズナイト実行委員会。

 ここは明治44年(1911年)に、時の東宮殿下(時の皇太子で後の大正天皇)の、北海道行啓に際する、ご宿泊所(御旅館)として建てられ、その資金を海運商として名を馳せた、藤山要吉翁の寄付によって賄われたのは、よく知られている。

 その後、小樽区公会堂、小樽市公会堂と名称は変わって行ったが、市民に愛され、使用される公共施設として利用している。ただ、最近は、駅前のマリンホール等、近代的で便利な公共施設があり、古臭い、バス停が遠い等の理由で、利用を敬遠する市民も多いのが現状だ。

 ここは建設当時、現在の小樽市民会館の場所に建設されていて、山側玄関の位置に公会堂の入口が向いていた。昭和35年(1960年)、その市民会館建設に伴い、道路を隔てた現在地に移築されている。

 現在地が小樽公園の斜面ということもあり、地下部分を鉄筋コンクリートで増設し、ステージ付きの学校講堂タイプの大ホールを造営した。地下と言っても、斜面なので片側には窓や出入口もあり、裏側にあたる紅葉橋から見ると、地下が1階、1階が2階に見える構造となっている。

 今回のイベントは、春、秋と年2回、異なった歴史的建造物を利用してのものである。第一弾が、ここ旧小樽区公会堂(小樽市公会堂)ということだ。色内大通り等に多く残る、銀行建築に代表される近代洋風建築と趣の違う、小樽では珍しい純木造和風建造物での開催だった。

 当日の入場は無料である。桜咲き誇る小樽公園を散策しながら、多くの市民、観光客、小樽ファンがご来場された。そして、ゆっくりと時間の流れる小樽を体現し、小樽の原点や原風景をしっかりと見つめ、そして未来の世代が、自分たちの足下を確かめるための材料をイベントとして遺したい。そんな思いが込められていた。

(斎藤仁)