妙見市場

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小樽は市場(いちば)の多い街である。そう、対面販売の鮮魚、野菜・果物などの小売店が並ぶ、あの昔懐かしい市場である。三角市場、中央市場、入船市場、手宮市場、南樽市場等々。

その中でも、写真の妙見市場は、川の上に建つカマボコ型の不思議な市場だ。住所は花園2丁目、その川は、於古発川(おこばちがわ)と称する。川下に妙見堂というお堂があり、そこから別名妙見川とも言い、この市場名の由来となっている。

戦後、樺太からの引揚者を中心に、川の両側にバラック建ての鮮魚店などの小売店をはじめたのが、この市場のはじまり。

天災のない小樽と言われる中、唯一6名の犠牲者、2名の行方不明者を出し、市内全ての川が氾濫した、昭和37年8月2日から4日にかけて襲来した台風9・10号による記録的豪雨で、妙見市場も流された。

写真の建物は、その時に建て替えられたものだ。もう既に築50年を超えている。以前は国道5号線からA.B.C棟と3つの建物で営業していたが、国道側のA.B棟は、2012年春に解体・撤去され、現在は山側のC棟のみで営業している。

小樽に越して来た頃、市場の山側緑町に住んでいたので、母親と何度か買い物に来たことがあった。市場内は、裸電球で薄暗かったが、、両側から聞こえる威勢の良いお兄さん、お姐さん方の掛け声に圧倒されたものだ。

「いらっしゃい、いらっしゃい」
「これ美味しいよ、坊や、お母さんに買ってもらいな」
「今日は、この魚が美味しいよ」

初めての時は、母親の傍らにしがみつき、中の通路を歩くのが恐怖だったが、ほどなく、掛け声にも慣れ、
「おっちゃん、ほんとに美味いのか??」
など、軽口をたたいていた。

後年、母親は、こんな事を言っていた。
「美唄から小樽に来て、妙見市場で魚を見たときはほんと、びっくりしたよ、魚がプリプリして、反り返っていたものね」
近年、パック詰めが主流となった社会であるが、たまに昔ながらの市場を覗くのも面白いかも!!!

(斎藤仁)