春の散策

suitengu10

小樽には独特の雰囲気があると感じる時がある。それはほんの些細なことだったりもするが、意識してみればやはり札幌とは違う空気があるのではないだろうか。
そして、自分にとってそれは建物だったりする。

入学したての1年の春、大学で知り合った友人とともに小樽散策に出向いたことがある。まだ日陰には雪の残る季節だったが、日差しは暖かく絶好の散歩日和だったと思う。お互いまだ小樽に通い始めて間もないため、散策も十分に楽しめる時期だ。

地獄坂を下り、いつもと違う道を歩んで、見たこともない店や慣れない雰囲気にちょっと戸惑うのが楽しい。十字路に出たときに、サインポールが5つも目に入ったのはいまだに覚えているが、あれはなかなか衝撃的だった。そんなに一か所に理容店が集まるような場所なのかと、友人と盛り上がった。

札幌の碁盤の目のような構造に慣れきっていると、とにかく歩くだけで面白い。地図も大して見ないでどこに行きつくかわからない経験なんてほとんどないからだ。
ふと、神社や寺院、教会と名前の付く建物が多いことに気が付いたのはそこそこ歩きまわってからだった。教会のそばに寺がある。神仏習合どころじゃない。

神社仏閣、教会なんて物自体は単体では物珍しいほどでもないが、少し歩けばほかの宗教の建物が目につくなんて今まで意識したこともなかった。考えてみれば通学途中の坂にもさまざまな教会や寺があったように思える。
なるほど、これも小樽らしさかと、勝手に納得してどんどん進んでいけば、大きな鳥居を見つけた。たまたま持っていた地図によると、どうやらこの先に水天宮があるらしい。せっかくだから行ってみようと、声をかけて鳥居のほうへ進むと、寺と名前の付いた建物があった。その隣には教会と掲げられた建物もあった。鳥居もあるのに、ごちゃごちゃである。

そして、それらの建物をスルーして行きついた先に、水天宮があった。先ほどまでの建物と比べてちょっとしたボスっぽい感じに達成感を得て、そこで散策を打ち切りにした。

あれから2年経ったが、いまだにこれらの建物が気になっているので、いつか神社仏閣めぐりをしてみるのもいいのかもしれない。

(滝樹)