堺町通りの秘密

小樽の有名な観光スポットといえば、やはり、あの堺町通り。
石造りの建造物、美しいガラス工房、歴史を感じさせる洋館。
都心からそう離れていないのに、まるで別の国に来たような、まるで別の時代にタイムスリップしてしまったような、そんな気持ちさえしてくる。

そんな、小樽に来たなら誰もが訪れる観光名所、堺町通り。
かつてこの一帯が海であったことをいったいどれくらいの人々が知っているのだろうか。

実はここ堺町通りは、海を埋め立てることによってできている。それだけでもすごいのだが、さらに昔は海食崖だったそう。
海食崖とはその名の通り、波の浸食作用によってできた海岸の崖のこと。現代ですら埋め立て工事なんて莫大な費用と労力がかかるはずなのに、今よりも技術が発達していなかった時代になぜ、わざわざこんな大掛かりな工事を、小樽市民は行ったのだろう。

1880年、札幌と小樽を結ぶ鉄道が開通されたことがきっかけとなり、小樽は石炭の積み出し港として急激に発展した。
しかし海岸線ぎりぎりまで急な崖地が迫り、平地がほとんどなかったことで、物資の保管場所に困る。

そこで小樽市民は考えた。海を埋め立ててしまえばいいと。すべては小樽の発展のために。その痕跡は通りの山側を見れば一目瞭然ではあるが、意識して見ることはあまりない。

小樽のたくましさ、そして力強さを感じられる場所は他にもある。埋め立てとは反対に、尾根をバッサリ切り崩して作られた花園エリアなんかもそう。かつての小樽市民は町の発展のためとはいえ、なかなか大胆なことをする。

小樽を代表する観光スポット堺町通り。なんとなくプラプラと歩くのも良い。お土産屋さんに夢中になって歩き回るのも良い。

じゃあ、かつての小樽市民のことを思い、崖を見ながら歩いてみるなんてのも悪くないんじゃないだろうか。あなたがこれから歩くその道、もしかしたら昔は・・・。

(みゆ)


※本記事の内容は2020年8月時点の情報に基づいたものです。

写真:眞柄 利香