歴史あるガラス工芸

チリンチリン。優しい風鈴の音色が小樽の街に響く。
海を連想させるような涼しげなガラスは、街と調和している。

小さい頃から、家族で小樽へ行くといつも大正硝子館や北一硝子に行っていた。歴史情緒あふれる建物の中に広がる、幻想的なガラスの空間は、まるで異世界のようでわくわくした。

透き通るきれいなガラスに心を奪われ、何時間でも眺めることができた。「ほしいな」と言うと、「一つだけね」と母は言った。私はじっくり悩んで気に入ったミニチュアガラスを買ってもらった。帰りの車でもずっと眺めていたのを覚えている。

オルゴールづくり体験をしたときには、ガラスでできたチューリップとワンちゃんの飾りを、緊張しながらもオルゴールにつけた。転校してしまう友達と、最後におそろいのキーホルダーを買ったこともある。そのひとつひとつが私の宝物だ。

小樽でのガラス工業は明治時代に始まった。ランプの製造やニシン漁に使われ、街の発展とともに成長していったが、終戦後に経済の中核が札幌へ移されて、小樽の発展は止まってしまった。
しかしガラス工業は失われず、貴重な文化として残り続けた。また実用的なガラス製品を見直し、工芸品としての価値を高める製品を生み出すことで、小樽はガラスの街として全国に知られるようになった。

そんな歴史があるからこそ、大切に選んだガラスは、思い出を振り返らせてくれるだけでなく、時代を生き抜いた力強い美しさを感じさせる。

私にとって、歴史ある景色に調和したガラスは、気持ちまできらきらさせてくれる。
小樽にはガラス工芸のお店がたくさんある。あなたにとっても、歴史を感じながら見つけたお気に入りのガラスは、その思い出とともに宝物になるだろう。

(ゆづき)


※本記事の内容は2021年7月時点の情報に基づいたものです。

写真:眞柄 利香