銭函駅

 銭函駅は、ホーム側駅舎出入口上部に千両箱(銭函)が取り付けられていた事で有名な、函館本線の一番札幌寄りのJR駅である。ちなみにこの千両箱を模した「銭函」は、半世紀ほど前の駅員手作りだったそうである。しかし、安全上の観点から、平成22年(2010年)6月より出入口横に置かれている状態だ。

 この銭函駅は、北海道で最初の鉄道である明治13年(1880年)開業官営幌内鉄道が、手宮-札幌間で開通した時に一緒に開業した北海道最初の駅の一つである。現在の駅舎は、昭和6年(1931年)築の2代目であるが90年以上が経過し、経年劣化も激しくなってきている。しかし、小樽市内数多ある明治・大正・昭和初期の歴史ある建物同様、保存しながら活用している好例の一つと思う。

 いわゆる銭函地区と言われる張碓トンネルから札幌側の人口は、1万3千人ほどと言われている。現在の小樽の人口の9分の1くらいかと・・・。そんな銭函地区住民の移動拠点がこの銭函駅なのである。

 平成7年(1995年)にほしみ駅(住所は札幌)が開業した今でも銭函駅は、地域住民はもとより、職能大の学生、銭函工業団地で働く人たちなどが多く利用し、乗降客は一日2千人ほどを数えている。

 小樽方面からの列車は駅舎側に停車し、札幌方面からの列車は山側に停車する。そのため、札幌中心部や、琴似、手稲方面で買い物をした妙齢の銭函住民は、荷物を持って長い階段の跨線橋上り下りが大変と、二つ手前の星置駅で降り(一つ手前のほしみ駅にはタクシーは停まっていない)、タクシーで帰宅することが多かったと聞く。

 それが、地域住民長年の夢が平成29年(2017年)10月に叶うこととなった。改札内にエレベーターと駅舎入口がスロープとなり、トイレも多機能化され、バリアフリー化されたのである。これにより札幌方面からの帰りも銭函駅で降り、エレベーターを利用することにより、快適に駅前広場に出ることが可能となったのだ。

 余談だが、駅前広場にあった世界的版画家一原有徳作鋼鉄製モニュメントが、潮風の影響を受け倒壊の恐れがあり、台座から一時取り外されている。元通りにするには、多額の費用がかかり、管理する小樽市としても頭を悩ませている。上手い落とし所が見つかればいいのだが・・・。

(斎藤仁)


※本記事の内容は2020年6月時点の情報に基づいたものです。