地獄坂の入り口からおもてなし

 ほっと、一息つかせてくれる場所が小樽には数多くある。小樽駅を出て右に曲がる。そのまま道なりに進んでいきJRがガタンゴトンと通る鉄橋の下まで行く。それからは小樽特有のアップダウンのある道を少し味わう、そして地獄坂入り口へ足を運ぼうとしたとき、「六美-ROKUMI-」がそこにはあるのだ。

 六美は小樽で3代、80年あまりも続く老舗の和菓子店である。多くのおいしい和菓子があるが、なんといっても驚いたのは「たるどら」のおいしさとボリュームである。
 この 「たるどら」はただのどら焼きではない。栗あり・餅あり・餡子ありの食べごたえ抜群のどら焼きなのである。さらに北海道の小豆と恵まれた自然に囲まれる、小樽のお水を使って作り出している餡も非常に甘みが深く、それでいてくどくないのである。

 札幌にもおいしいお菓子のお店はあるだろう。小樽にわざわざ来て和菓子を食べようとは思わない、という人もいるだろう。しかし一度食べて頂きたい。きっと食べたらわかる。この「たるどら」は小樽の穏やかで素朴な雰囲気を感じさせてくれる。

 近年インスタ映えを狙った商品を出すお店も多いように思う。その中で変わらぬ素朴なおいしさを追求しているところに小樽らしさを感じるのだ。老若男女に愛され続けるわけはそんな小樽の魅力がつまっているからだと思う。

 六美からは地獄坂がみえる。六美までの道のりで小樽人のたくましさを感じたならここで一息ついて運河を目指すもあり、まだまだいけると感じたならばぜひ、「たるどら」を活力にして地獄坂に挑んでほしい。

 私のおすすめは、坂をのぼった先にある小樽公園から雄大な風景を一望しながら、のんびりと食べることである。少し運動した後の体にはボリューム満点のご褒美が待っているのだ。町全体の雰囲気を味わいながら落ち着いて食を味わうことができるのは、このまちならではだと思う。

 無事に登山を終え、帰ってきた時にはまた立ち寄るといいだろう。今度は大切な人へのお土産として買うために。ほっと一息つかせてくれる、素朴な小樽がそこにはあるのだから。

(いちごラブ)