ゆったりとした時間が流れる街

 私は早朝の小樽が好きだ。起きているのは鳥くらいで、自分以外に人気を感じない。心地の良い、いつも通りの朝である。
 そんな理由から、私は早朝に散歩をすることが多い。おそらく札幌から小樽に来る人のほとんどは、このような小樽の一面は知らないであろう。今回は小樽に住んでいる人しか感じられない小樽を一緒に体験していきたい。

 小樽の朝は少し肌寒い。吹いてくる風は海の匂いがして、海に近い小樽ならではではないだろうか。昇ってきた朝陽にあたると、少し暖かくて小さな幸せを感じる。小樽は高い建物が少なく、道も広いため他の街よりも沢山の朝日を浴びられる。このタイミングでいつも、「ああ、今日も頑張るか」と思うのである。

 散歩をしている時はいつだって何かを考えている。嫌だったこと、嬉しかったことなど、出そうと思ったらきりがないくらい。その時、昔から変わらない匂い、気温、静けさが昔の自分を思い出させる。「そういえばあの時あんなことで悩んでいたなあ」ということであったり、「あの時の決断は思い切ったなあ」ということだ。それと同時に、自分が当時に戻った様に感じて、恐ろしいほどのノスタルジーな気持ちになるのである。時間がゆったりと流れているが故に、環境の一致によって過去に戻れるのかもしれない。

 ここで私は、これほど鮮明に過去を思い出させる力を持つ小樽は、いつも私のそばにいてくれたということに気付くのだ。ゆったりとした時間の流れを泳いで今と昔を行き来できる街。それが私の地元、小樽だ。

 これを読んでいる皆さんにも、地元はあるだろう。あなたにも、辛くたって、楽しくたって、大雪だったって、いつも通ってきた道があり、そこには過去の自分が隠れている。今まで何の気なしに通っていた道にも、きっと沢山の思い出が詰まっているだろう。そこで、私の地元はいつだって私のそばにいてくれたのだ、私の地元はここなのだと感じてほしい。
 小樽にきて、「いい街だな」と思っていただけるのは凄くありがたいし嬉しいが、機会があれば、誰かを見守り続けている地元としての小樽を感じてほしい。

(生粋の樽っ子)


※本記事の内容は2018年7月時点の情報に基づいたものです。