両国

 国道5号線沿い塩谷にある両国そば店に行ってきた。毎週倶知安に行く時にこの威風堂々とした純和風の店舗を眺めてはいたが、お邪魔するのは初めてだった。

 車のディーラーや各種集配センター等が立ち並ぶこの地域で、一風変わったこの建物は、いやがうえにも視界に飛び込んでくる塩谷のランドマークである。

 入店したのが午後2時頃だったので、店内にお客さんはいなかった。早速、そば店特有の背もたれの低い和風椅子に腰かけ、迷わず好物のかしわそばを注文した。

 店内を見渡すと、ボックス席数席と大きなお座敷小上がりにテーブル席がいくつもあり、昼時はかなりの賑わいになるのだろうと勝手に想像したりしていた。

 折角だったので、いろいろ聞いてみた。
「両国って、小樽駅前長崎屋の中にも、銭函国道沿いにもありますよね、何か関係あるのですか???」
「はい、もともとは同じ系列の店だったのですが、今はそれぞれ独立採算で営業していますので、メニューとか少し違うかもしれません。」
と店主の小林幸造さんが説明してくれた。

 さらに私が
「両国って国技館のある両国ですよね。そこにはお蕎麦の由緒があるのでしょうかね。」
と聞くと
「先々代にあたる私の祖父が、両国でそば屋の修行をしたのが店名の由来と聞いています。札幌や帯広にも両国という名前のそば店はあるようですが、うちとは関係ありません。」
と答えてくれた。

 その先々代のおじいさんが、昭和の初期に樺太で創業したのがこの店のはじまりだそうだ。戦後、樺太から引き揚げてきて妙見川沿いに店を構え、昭和30年頃に小樽駅界隈に移り、小樽駅前再開発で長崎屋の中に入り、塩谷には昭和57年(1982年)に塩谷店として開店しているという。

 塩谷店のスタートは駅前の分店としてだったようだが、現店主の先代に当るお父さん、お母さんがこちらをメインに働いていた関係で、長崎屋地下のお店が今では両国分店となっているようだ。

 この塩谷の店舗は、平成4年(1992年)に先代お父さんの念願だった純和風書院造りの建物に建て替えたそうだ。店主は初対面の私に、いろいろと店の歴史を語ってくれた。

 さて、肝心の味であるが、更科系の麺、出汁の効いたつゆ、長年にわたり市民に愛されてきた美味しいそばを食させていただいた・・・。今度は人気の天ぷらそばでも食べてみようと思いながら、お店を後にした。

(斎藤仁)