公会堂の曳家

auditorium

 小樽公園内に建つ小樽市公会堂は、元々は道路を挟んだ向かい側小樽市民会館の場所に建てられたのは良く知られている。道内各自治体に本格的ホールが続々と建設され、小樽でも建設機運が高まった昭和30年代、公会堂の場所に新ホール(小樽市民会館)を建設することとなり、昭和36年(1961年)現在地に移築している。

 ここまでは、私も子どもの頃から聞かされていた話であったのだが、この移築がウィルダネス社発行「小樽散歩案内」2014年新版で、曳家であったと記載されているのだ。

 移築と言われているので、私は自分勝手に建物を解体し柱などの部材に番号をふり、現在地で建て組み直したのだとずっと思っていた。まさか100m弱の距離を、道路をまたいで移動させたなどと想像もできなかった。

 近年だと、中央通りと色内大通り交差点の旧安田銀行小樽支店の曳家が有名である。これは道路拡幅工事のため、11メートル斜め後方に移動しただけで、向きは変わらなかった。

 しかし、公会堂の曳家は、回転させながら100m弱移動するということを行っている。建物自体の重さの問題等、一概に比較はできないと思うのだが・・・。

 元々の公会堂は、現在正面に見える洋室棟と、体育館側にあり正面からは全貌が見えない和室棟が、平行に裁判所に向かって建っていた。それを現在地では用地面積の問題でL字型に移動させている。

 まず、写真に写る公会堂1階と地階の間に鉄筋コンクリートで土台を作り、その上に洋室棟をほぼ直角+半角の135度ほど回転させて移動してきている。片や後ろにあった和室棟は45度くらいの回転で体育館側へ移動したようだ。

 現在の洋室棟は正面玄関からまっすぐの1号、2号会議室となり、和室棟は松、竹、梅の和室としてお茶会などに使われている。この2棟は直角の位置関係にある。地下の大ホール等はこの時、鉄筋コンクリートの土台の下に新築されたものである。はみ出して見えるコンクリートの土台が、大ホールの天井にも見る事ができる。市民会館と公会堂の間に立ち、いにしえの曳家を想像しただけで胸躍る気持ちになる。

(斎藤仁)