常連想い そば処やま安

yamayasu

 通りは龍宮通りに接している。龍宮通りは山手に龍宮神社をいただいている。祭礼のとき、露店は龍宮通りから梁川通りにかけて並ぶ。神輿は、全市から駆け付ける若者たちの方で、威勢よく繰り出される。かつて色内川が暗渠でなかったころは、川の上に丸太を渡して見世物小屋も建っていたそうだ。この通りに店を構えるのが老舗そば処「やま安」だ。

 熱々の熱気とともに、さば節や昆布などで取った上品なだしの香りが立ち上る。海老天やもち、とろとろの半熟卵、鶏肉、かまぼこ…。蕎麦が見えないほど具だくさんだ。上鍋焼きそばは寒い冬にぴったりの絶品。「通年で出しているけど、やっぱりこの時期が一番人気」と店主の安藤彰啓さん。蕎麦は市内の製粉所で独自に配合してもらった粉を毎朝手打ちにする。麺と具を別々にゆでた後、土鍋で合わせて火にかける。煮込まれた麺が柔らかいのが堪らないと、常連客をうならせる。
 「やま安」の初代、安藤儀助氏は1912年(明治45年)に福島から小樽に移住し、屋台をかつぎ、蕎麦屋として生業をたてていたのだが、昭和10年に現在の梁川通りに店を構えました。

 

 現在は、4代目の安藤彰啓さんが跡を継いでいるが、驚くのは駅前のお店であるにもかかわらず、全般的に値段が安いこと。
 「美味しいものをできるだけ安く」と、毎日来てくれる常連さんが多いので、食べやすい値段にしており、まさに庶民の味方というお店!蕎麦に限らず、天丼などご飯ものの他、手打ちうどんも自家製麺のラーメンもある。
 冷たいつゆ、あたたかいつゆとそれぞれ別の味付けをされており、いろんなメニューを食べたくなるお店だ。JR小樽駅から徒歩五分と近く、地元の人たちで賑わう、庶民派の老舗だ。

(二木 涼)