うにとじ

uni_toji_soba

 完汁という言葉がある。
 ラーメンの愛好家達の間で使われる言葉であり、ラーメンを食べ終わった後に、スープを全て飲みほす行為のことを言う。私は、ラーメンではなく、小樽の蕎麦屋でこの行為をすることとなった。

 この写真の商品は、昭和29年創業の小樽の老舗蕎麦屋、藪半のうにとじそばである。長崎屋のすぐ裏の路地を入って進んでいったところにあるお店である。温かい蕎麦の上にたっぷりウニを乗せたとても贅沢な一品である。

 私は大学二年生の夏に、友人とこの商品を食べることを目的として、この蕎麦屋藪半へ向った。お店の外観はとても立派で、まるで料亭のような古風な佇まいであった。小樽が昔鰊漁で栄えた名残の石倉や、歴史的建造物の再生活用をしているらしく、他の蕎麦屋とは違った、独特な雰囲気が感じられた。
 店内は外観から想像するものより、とても広く全部で72席あり、2階には予約をすれば利用可能な和室があるそうだ。宴会プランや飲み放題などの、蕎麦屋のメニューとしては珍しいものも存在する。そばだけでなく、一品料理のメニューも存在し、蕎麦屋としてではなく、居酒屋のように利用することが可能である。このお店のコンセプトとして、小樽に住んでいる人がとっておきの小樽を他人に教えないようにと、蕎麦屋酒という珍しいメニューが存在するそうである。また、そのため、食材も小樽産にこだわっている。

 私がこのお店に行った際、メニューには鰊そばを初めとした魅力的な商品が豊富にあったが、先に決めていたうにとじそばを注文した。数分後、運ばれてきた商品は、うにのダシがよく効いていて、とても良い香りがした。実際に食べてみると、香りだけではなく、しっかりとうにの味がして、普段のそばとは一味違って美味だった。夢中で食べ続けて、そばを食べ終わると、そばと一緒に食べきれずに残ったうにが、ダシの上に浮いていた。私は、ちょっと卑しいとは思いながらもレンゲでうにをすくって食べた。私たちが食べ慣れている生うにとはまた違った味わいで、とても美味しかった。普段は残してしまうそばのダシも、私は初めて蕎麦屋で完汁をした。

 藪半は、海産物や古きを重んじたたたずまいなど、小樽の魅力が詰まったお店であるといえるだろう。他にも魅力的な商品が豊富にあるので、小樽に住んでいる方にはぜひ一度味わっておくべきである。

(水上宗)