小樽窯から幸愛硝子

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 入船町、天上寺の上、旧東山中学校の向かい側にあった北海道最古の名窯「小樽窯白勢陶園」跡が、平成22年(2010年)、幸愛硝子(ゆきえがらす)という硝子工房に生まれ変わった。

 市民のみならず、全国にファンを持つ小樽窯が、後継者難から一世紀以上の歴史に幕を閉じ、その後に小樽観光の一翼を担う硝子工房に引き継がれていくとは、上手く時代は流れていくものと感心している。

 家内が緑玉織部(りょくぎょくおりべ)釉の青緑色に代表される、小樽焼ファンだったこともあり、30年ほど前から窯元へ直接湯飲みやコーヒーカップ、皿などを買いに行ったものだった。なにしろ、丸井、三越など百貨店の店頭価格の、ほぼ半値で購入できたのだから窯元詣はやめられなかった。

 ただ、在庫の無い物は半年待ち、1-2年待ちという状態だった。ちなみにそんな人気の製品でも百貨店ではすぐ購入できた。それが値段の差だったわけでもある。

 ここに来るといつも三代目白勢栄悦氏の奥様、ヨシさんが応対してくれた。初対面の方には、小樽っ子独特のぶっきらぼうさを感じるようだが、私には昔近所によくいた口うるさいけど、優しいおばさんという感じだった。

「お母さん、この茶碗うわぐすりはみ出しているけど、失敗じゃないの取り換えてよ」
「あんたはほんとになんも知らないんだな、それがいいんだよ」
「あっそうなんだ・・・」

 まあこんな感じだった。いろいろ尋ねると懇切丁寧に、陶器の見分け方を教えてくれたものだった。

 さて、建物を引き継いだ幸愛硝子だが、近年人気の硝子作家宮越幸愛さんの工房である。私の知り合いの団体でも、お客様のお土産にここの硝子製品を差し上げているという。

 幸愛さんは硝子の本場大阪出身であるのだが、ご主人が小樽出身ということで小樽に工房を開こうと、物件を探していてここにたどり着いたという。

 静かに時間の流れるこの街で、次の一世紀に向かいゆっくりと歩んでいってほしいと願っている。

(斎藤仁)