地獄坂

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 地獄坂は,現在の小樽商科大学へ続く道にある。地獄坂の名前の由来も,小樽商大と関係があるようだ(小樽市のホームページによる)。商大の前身,第五商業学校が開校したばかりのころ,地獄坂のある緑町界隈には住宅がなく,荒涼とした丘だったらしい。第五商業学校の校舎はヨーロッパ風の近代的な建物なのだけれど,上まで行かないと見えず,丘を登りきるとモダンな建物が突如として現れる,といった風情だった。

 夏は汗をかきながら,冬は道なき道を這うようにして学生たちは校舎まで通った,という。本当に大変だったらしい。いつかしら,学生たちはこの坂を地獄坂と呼ぶようになった。

 今では地獄坂も舗装され歩きやすくなった。あたりもすっかり住宅街になった。路線バスやタクシー(3,4人で相乗りする)を使って小樽駅から商大まで来る学生が多いが,駅から歩いて上がる学生も少なからずいる。

 地獄坂は,始めのうちは緩やかだが,上るにつれて急になる。一番急なのは大学の正門を入るあたり。あと一息でゴール,というところが一番つらい。とりわけ,冬は歩道が凍りついていて,上がるだけでも苦労する。厳冬期,正門あたりで学生や先生がよく滑って転ぶ。

 小樽市内の坂にはたいてい勾配の表示された標識がある。地獄坂の勾配は10%。小樽の坂は急な坂が多いが,地獄坂も急な方だ。地獄坂を下るとき,海に向かって一直線に下りていく感覚になる。爽快感があって気持ちがよい。先人たちもきっと同じような思いを抱いていたに違いない。小樽の誕生とともに地獄坂は生まれ,小樽の発展を見守り続けてきた。この急坂を学生たちが今も通い続けている。

(公)