見慣れた景色に潜む歴史
南小樽駅まで車で迎えに来てもらい、天神十字街を曲がり、祖父母の家に行く。これが私の幼い頃の夏の恒例行事であった。
天神十字街でバスを降り、祖父母の家まで続くこの道を、初めて歩いてみた。
小樽には坂が多いというがこの道はただの坂道ではない。見渡せば木、木、木…。ここは山道という方が的確かもしれない。この日は心地よい風の吹く日であったのに少し汗ばんできた。
この道は母の通学路であった。小学校も中学校も高校のときも、朝はこの道を下り、帰りは上っていた。だから足腰が強いのだとよく母から聞かされていた。
ずっと札幌に住んでいたため、坂道とは、ましてや山道とは縁のない生活をしていた私には、想像もつかない。いつもは車で通っていた道を歩いてみたら、母の気持ちがわかるのではないかと思ったのである。
その母の通学路を歩いていると、昔の私にとって不気味な場所が見えてきた。それは左手に見えてくる墓地だ。車に乗ったら一瞬ではあるが、たくさんの墓が見える。幽霊を信じている訳でもないが、やはり少し怖いものだった。歩いてみると一瞬ではない。よく見てみると、入り口には階段を埋め尽くすかのように花が咲いていた。
小樽商大にゆかりのある著名人として、よく小林多喜二が挙げられる。先日、何気なくその名を検索すると衝撃の事実を知ることになった。彼の墓はその墓地にあるというのだ。小林多喜二ゆかりの場所が、昔から知る場所にあるのかと驚いた。ただ墓がたくさんある、怖い場所としか思っていなかったのに。
いくら身近なものであっても知ろうとしなければ歴史は知ることができない。小樽には身近なところに歴史が詰まっている。ふと通る道でも、もっと周りを見てみようかと思う。
きっとあなたの知らなかった深い歴史を発見できるだろう、それが小樽だ。
(かきごおり)
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※本記事の内容は2019年7月時点の情報に基づいたものです。
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