カラフル消火栓

 私が小樽に引っ越してきて約1年、今ではすっかりその姿に見慣れてしまい、驚きも感動も全く感じられなくなってしまった。
 しかし、小樽に生活する者にとっては毎日のように目に触れ、全国的にも珍しい「あるもの」がある。それは、カラフルな消火栓である。

 「消火栓の色のイメージは?」と聞かれたとき、小樽とは別の地域に住む方々は、きっと「赤色」と答えるだろう。実際に、消火栓は消火活動の際に必要な水を供給するための設備であり、赤色に塗られているものが多い。

 しかし、小樽の消火栓の色は赤色に限られていない。赤色のほかに黄色、青色、さらには、消火栓の胴体と帽子の部分で色が分けられているものなど、そのカラーバリエーションは豊富で、現在は5種類の消火栓が小樽市内に存在している。
 一体なぜ、全国的にも珍しいこの消火栓が、小樽の街に設置されているのだろうか。その理由は、過去に小樽市内で発生した火災が関係している。

 小樽は「坂のまち小樽」と言われるほど、高低差の大きい街である。小樽市のホームページによると、水道局が市民に安定した水を供給するために配水池などが35ヶ所設置され、そこから延びる配水管に消火栓が接続されている。
 しかしそれが仇となり、昭和49年に発生したとある火災において、同系統の配水池から延びる消火栓を過剰に使用し、水が出にくくなるという経験をしたそうである。この経験を機に、火災の際に同系統の配水管からの消火栓を使わないように、色分けされるようになったのである。

 初めて小樽という街に足を踏み入れた時、私には様々な感情が溢れ出していた。
 小樽運河ののどかさ、ガラスやオルゴールの煌びやかさ、外国人観光客で栄える通り、そんなほかの地では味わえないような出会いが私の脳裏を焼き付けた。
 そしてその中で感じたほんの些細な違和感、それが今まで見たことのなかったカラフルな消火栓である。

 皆さんの小さな出会いはなんですか?

(O.K)