米菓堂

 米菓堂は花園銀座街にある、洋菓子ケーキ店と喫茶店である。以前は向かい側にお店を構えていたのだが、数年前から現在地に移転している。前の店舗で数回、今の店舗になり1回だけだが、おじゃましたことがある。ちなみに昭和3年(1928年)創業、小樽で一番古い洋菓子と喫茶のお店ということである。

 その現店舗になってから1回の訪問について少々解説させていただくとする。

 今から3年前、平成26年(2014年)後期のNHK朝ドラがニッカウヰスキー創業者竹鶴正孝氏夫妻をモチーフとした「マッサン」であったことは記憶に新しい。舞台の地元、隣町の余市をはじめ小樽でも、竹鶴夫妻のお気に入りだった場所、お店、好物等々、少なからず活発な宣伝がなされていた。

 ここ米菓堂でも、リタ夫人お気に入りのアップルパイが今でも当時のまま作られているとのことで、いろいろなメディアで宣伝されていた。そろそろ混み合うのも峠を越したかなと、流行の半纏を着るために私も出かけたわけなのである!!!

 訪問したのは平成27年(2015年)冬の夕刻、ドラマが終了して既に半年以上が過ぎていた。近年、喫茶店に入る事こと自体減っている私の日常生活であるのだが、ある宴会の前、少し時間があったので、リタ夫人お好みのアップルパイを食する事を目的に、米菓堂のドアを押し開けた。

 お店の前面右側にショーケースがあり、その奥に喫茶コーナーがある。

 お店には喫茶も含めて誰もおらず、お店の方に

 「喫茶コーナーは、入っても大丈夫ですか」と尋ね、心地よい返事をもらった後に、奥の喫茶店に立ち入った。

 昔懐かしい背もたれが直角の二人掛け椅子・・・、真ん中に鎮座しているやかんの置かれた四角いポット式石油ストーブ・・・、一気に昭和時代にタイムスリップしたような錯覚に襲われる・・・。

 早速、コーヒーとアップルパイ、そしてこの店の名物と言われているオリジナルのモンブランを注文した。ちなみにこのモンブラン、栗を使用していない・・・。あくまでアルプス山脈のモンブランの雪山をイメージして作成したとの事である・・・。

 さて、肝心要のアップルパイであるのだが・・・、なんと既に売り切れ・・・。ご主人によるとテレビ放送中より、爆発的に売れ出し、電話予約注文でなければ購入できないとのこと・・・。ドラマ終了後、半年以上経っていてもその流れは続いているというのだ。

 私は、寂しくコーヒーとモンブランを食し宴会場のニュー三幸に向かったというのが、現店舗を訪問した時の事の顛末である。

 件のアップルパイ、今日まで残念ながらまだ食していないのだ・・・。

(斎藤仁)