観覧車

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遅刻しそうになって走っている時、疲れきった帰り道、うとうとしている朝の電車、どんなに急いでいても、眠くても、どんなときにも目に入るのは観覧車「レインボークルーズ」。

毎日小樽に通う私にとって、この観覧車はなくてはならない存在だった。
他の駅なら、駅名が書いた看板を見るまでどこの駅かわからないのに、小樽築港駅だけはこの観覧車でわかる。
ドアが開いた音で目が覚めて、少し慌てて窓の外を見ると、雨の日でも風の日でもいつでも私を待ち受けてくれる。
そんな毎日が今では懐かしい。

小樽の大学に通い始めてもうすぐ4年目になる。
電車で小樽に通う日は以前に比べると少なくなってしまったが、観覧車を見るたびに学生生活を振り返るのだ。

中でも私が一番好きだったのは仕事帰りの観覧車だ。
アルバイト先への通勤には小樽築港駅を利用していた。
もちろん出勤時にも私を出迎えてくれる観覧車だが、夜になると光をつけて、昼より一層増して大きく見えて、「おつかれさま。」と一番最初に言ってくれるのだ。

観覧車を真下から見ることなんて滅多にないものだ。
遠くから見れば、ただの景色の一部にすぎないかもしれないが、真下から見上げると、
一つ一つの電飾がせわしなく輝いて、1日働いて疲れた私を癒してくれる。

実はこの観覧車、今は動いていない。
かつては毎日動いていて、私が子供の頃に家族で訪れた時は、喜んで乗ったものだ。
隣接しているウィングベイ小樽のレシートを3000円分集めると無料で乗ることができたらしいので、レインボークルーズが復活すれば、小樽築港駅の繁栄にもつながるのでは?…と密かに期待している。

残念ながら乗車することはできないが、今では小樽の夜のシンボルとして輝き続けている。
ネオンパターンは40種類あって、しばらく見ていても飽きないものだ。
以前電車が止まった時にも、観覧車を眺めているとあっという間に動いてしまった、なんてこともあった。
前とは違う形で小樽市民の心の支えになっているのだ。

(樋)

(観覧車「レインボークルーズ」は,惜しまれながら,2015年9月に撤去されました。)