猫のいる町

nuko

 私は2012年4月にこの町に移り住んできた。もともとは18年間旭川に住んでいて、大学進学のために小樽へ来たのだが、移り住んできたのは4月。まだまだ北海道は雪景色で、入学式に桜が咲いている、と言うのは北海道民にとってはイメージしにくい。実際に自分の入学式は当然、ポカポカの春陽気。ではなく雪が降り、風が吹き、吹雪であった。

 数ヶ月が経ち、雪が溶け、地面が顔を出し始めた頃、あることに気づく。この町はのら? 猫が異様なほどに多い。私は買い物に行くときは、大学から駅に向かって左に曲がり、富岡教会の前の道を利用する。そこの車一台程しか通れない道があるのだが、入学した頃は大人の猫が数匹。数ヶ月が経つと、子猫が5、6匹追加されていた。
 近所の人が餌をやっていたが、猫を見かける範囲が飼い猫にしては広く、恐らくはのら猫が子を産んだということだろう。なぜ、あんなにも子猫は可愛いのか。見ているだけで癒されるというのは才能ではないか。この可愛さを世界平和に利用するほかない。

 猫が多いのはその辺りだけだろうと思っていたが、そうでもないらしい。私が住んでいる大学と小樽駅の中腹あたりの緑町でもよく目撃する。また、他の人から聞いた話なのだが、小樽駅から海側へ下っていった方にも猫はいるということだ。色内あたりにある廃線の線路が残されていて線路に沿って歩けるようになっていて、線路沿いには少し遊具がある小さな公園がある。そこは車も通らないので猫がいてもおかしくないのどかな雰囲気を持っている。
 なぜ、小樽にはこんなにも猫が多いか理由はハッキリしないが、恐らく漁場である小樽では売り物にならなくなってしまった魚などに容易くありつけたため、猫にとっては暮らしやすい街だったのだろう。とイメージが膨らむ。

 旭川では今も犬を飼っているのだが、かつては犬以外にはあまり興味がなかった。小樽に来ると猫と関わる方が多くなってしまった。猫が好きになれる町、小樽。

(谷口)