小樽150年の味・・・これまでも、そしてこれからも

daifuku_kaminariyokeshinko

わたしが、トン車乗りこと、タクシードライバーになったばかりのこと。

初めてのお盆を迎え、慌ただしく仕事に追われる毎日を送っていたある日、うちの会社のタクシーをいつもお呼びいただくお客様から、お餅を買いに寄りたいと頼まれた。

おっしゃられた場所は、量徳小学校脇の「青い」お餅屋さんだった。
建物自体は昔からある木造家屋なのだが、正面全体に青いトタンを張っているので容易に他店と見分けがつく。
お客様は、先立たれた旦那さんに会いに行く前に、生前好きだったというこのお店のお餅を買いに来たのだ、という。

「運転手さんはここのお餅、食べたことあるかい?」
「いえ、初めてです。」とお客様の問いに答えると、ずっとずっと昔からあるお餅屋さんだから是非一度味見してみてと言われ、大福を2個も差し入れしていただいた。

昼休みに食べると、とても肉厚でコシの強いお餅、それに、微妙な塩加減が何とも言えないこしあんの大福で、一発でわたしは虜になった。
後でうちにもお土産にと思って買いに寄ると、その日は既に閉まっていた。二日後の勤務の際に立ち寄っても、また閉まっていた。

どうして?答えは他のお客様が教えてくれた。
「あのお餅屋さんはいつも、朝7時ぐらいにお店を開けるんだけど、いつもお昼前には完売して閉めちゃうんだよね。運が良ければ昼過ぎでも残っていることがあるけど、お盆とかお彼岸だったらもっと早く完売するんじゃない?」

ならば朝7時前後に退勤する、当直勤務明けすぐに行ってみようと思い立ち、次の当直勤務が終わってすぐに足を運ぶと、もち米を蒸した湯気の香りが漂い、餅をつく杵の音がこだまする。
程なくお店が開き中へ入ると、甲斐甲斐しく動き回る売り子さんと、色とりどり、出来たての大福たちがわたしを出迎えてくれた。
違う種類の大福を4個買ったのだが、それ以降、何故か4個買うのがいつものパターンとなった。実家に行くときのお土産の場合を除いては。

このお餅屋さんの名前は、「雷除志ん古」さん。
ネット等で調べてみると、安政5年に創業して以来、150年以上の歴史があるという。
この辺りには材木屋さんや建設屋さんが多いから、人夫さんや大工さんが弁当代わりに食べていたのだろうか?なんてことも想像してしまう。
小さなお餅屋さんが150年も続いたということは、熱烈な常連さんがいただけではなく、伝統の味を守る職人技を受け継ぐ後継者に恵まれたからこそだろう。

今朝もまた、夜明けの大福を4個買って来た。
わたしも、妻も、小2の長男も、みんな大好き。雷除け志ん古の大福たちが。

(轟 拓未)