雪あかりと共に去りぬ〜小樽グランドホテルの閉館と商店街の未来

otarugrandhotel2009

わたしが最もよく客待ちをする場所として、旧小樽グランドホテル前のタクシー乗り場がある。
今、ここの景色が一変しようとしている。
ここにはこれから、病院と高齢者住宅が立つ予定だが、わたしとしては、ここにはやっぱり商業ビルとホテルがあってほしかった。
元のビルより小さくなってもいいから、観光客と地元客が交わるように流れ歩く場面をもう一度見たいと切に願っている。

旧小樽グランドホテルが閉館したのは、2009年2月15日。
わたしもその一報を聞いたときは、寝耳に水。衝撃を受けた。
ところがその内情はと言えば、開業当初の設備投資の元が取れず、赤字が膨らんだ末の結末とのことだった。
「そんなバカな。あれだけ何度もお客様の送り迎えをしたのに。会合も頻繁に行われていたし、宿泊客だっていっぱい出入りがあったのになぜ。」
にわかには信じられず、感情的な思いが繰り返し頭の中を反芻していた。

釈然としない思いを引きずり続けていたが、それでも閉館への流れは止まらなかった。
そしてついに迎えた2月15日。
この日は折しも、第11回小樽雪あかりの路の最終日。
わたしはこの日も仕事で、お客様を乗せて市内各所を駆け巡っていたのだ。
夕方まで休みなく仕事をし、夕食休みはグランドホテルで・・・と思い行ってみると、グランドホテルの飲食コーナーは既に閉まっていた。
最後の名残を惜しんでいたお客様が出て来て、次々とタクシーに乗り込んでいく。
わたしのタクシーにもお客様がご乗車され、グランドホテルでの想い出話に花が咲いたが、閉館後のスタッフさん方のことをも案じておられた。優しく愛のあるお客様のお話に、しみじみとしながらまたグランドホテルへと戻るのを繰り返す。その日は、他のところで客待ちする気にはなれなかった。最後の最後を見届けたい一心で、何度もグランドホテルへと車を向けた。

雪あかりの路がフィナーレを迎えた後もまだホテルには明かりがついていた。後片付けをしているようだったが、日付が変わってついに明かりが消え、従業員さんが出て来た。そしてわたしのタクシーにご乗車された。
銭函までのご乗車で、道中25分の間、仕事の想い出話だけではなく、小樽観光の将来のこと、今後の身の振り方のことなどを話しておられたが、表情は努めて明るさや前向きさを保っているようにさえ見えた。そして降りがけに、なんとチップまでいただいた。泣けて来た。あまりここには長く止まっていられないと思いつつ少し移動し、涙が止まってからゆっくりと会社へと帰庫し、その日の長い長い勤務は終わった。

ここに添付した写真は、その日の日付が変わる直前に、客待ちしながら撮ったものである。
その後しばらくして、このビルは完全に無人となり、今は跡形もなくなりつつある。
旧丸井さん、旧ニューギンザさん、旧北海ホテルさんがあった頃からわたしはこの商店街を見続けて来たが、今後サンモール一番街はどこへ行くのだろう?
商店街としての方向性、そして将来の姿が気がかりだ。

(轟 拓未)