人懐っこい小さな家族

小樽は景色のいいところが多い。そのため、散歩をするのに適している。

私は小樽に来てから休日はよく散歩をするようになった。
街を歩いていると、犬と飼い主が散歩している光景をよく目にする。反対側からやってくる散歩中の犬に目をやると、ふとリードを引く飼い主と目が合う。どちらともなく「こんにちは」とゆったりとあいさつを交わすと、その間にお互いの距離が近くなる。

するといつのまにか、私の足元に、犬が。

「触ってもいいですか」と声をかけ、許可をもらうと私はその場にしゃがみ込む。手のにおいをかがせ、ペロッとなめてくれたら顔周りをなでる。そのまま少しじゃれあって、しばらくすると立ち上がる。そして飼い主にお礼を言って別れ、すれ違ってゆく。

これは、小樽に来てから度々起こることなのだが、よく考えると高校時代を過ごした街ではほとんどなかったな、と思う。近所の人とあいさつを交わすことはあっても、初対面の犬が人懐っこく近寄ってくれることは珍しかった。

そのため、最初のうちはこのような場面に多く出会うことに驚いた。犬が人懐っこいというのは、小樽の人があたたかく、やさしいからだと思う。
やさしい人に囲まれて生活をしているから、人に対する恐怖心がないのかもしれない。そう思うと、なんだか心が温かくなるような気がする。

散歩中の犬と触れ合っていると、私は幼いころに住んでいた街を思い出す。近所に、犬を飼っている家が二軒あったからだろう。

どちらも人馴れしていて、いつも触らせてくれていた彼らを私はいつまでも忘れられないのだ。そして、それと共に、近くに住んでいた友達のことなど幼少期の思い出も蘇ってくる。
過去を思い出し、今は逢う機会のない人々との思い出に浸るのは、小樽で新しい思い出を作っていくことと同じくらい幸福だ。

小樽の人々、犬はあたたかい。そして、私にとってどこか懐かしさを感じさせてくれる街である。住み始めて日は浅いが、小樽は私にとって宝物だ。

(ぺぺんぽ)


※本記事の内容は2022年7月時点の情報に基づいたものです。

写真:眞柄 利香