手宮公園での体験
「ねえ、秒速5センチなんだって。桜の花の落ちるスピード、秒速5センチメートル」
これはある映画の冒頭のセリフである。しかし、桜の花びらの落ちるスピードは実際は秒速2メートルほどらしい。
フィクションの中で小学生の女の子が言ったセリフなので、数値の正確さにあれこれ口出しをする必要は無いとは思うが、なぜこのようなことをこの小学生は言ったのだろう。
しかしその後、小樽の手宮公園で桜を見たときに、この女の子の言うことは間違っていないと思った。
そこに行く前、正直に言うと、ほかの桜の名所と何が違うのだろうか、と疑問に思っていた。
初めて行ったとき、桜があちこちに咲く丘を登っている途中に、古びた遊具で遊んでいる子どもたちを見かけた。
最近では見かけないような鉄製の丸いジャングルジムを見たとき、自分も幼稚園や小学校に通っていたころ、家の近くのこんな公園で遊んでいたっけな。と懐かしい思い出がよみがえってきた。
そうしているうちに、すっかり気分も穏やかになってきて、丘の上から見る桜の木々と小樽の海、そして小樽の街並みは時間が止まっているみたいで、まるで一つの絵画を見ているようだった。
そして、その時みた桜の花びらは、秒速2メートルもの速さですぐに地面についてしまうようなものではなく、秒速5センチメートルでゆっくりとした時の流れに漂うように落ちていたように私は感じた。
このゆったりとした時間に、心が浄化されるような、豊かになるような気持ちを私は味わうことができた。
小樽には様々な観光地があるが、その根底にある小樽の魅力は、ゆったりとした小樽だけの時間を体験できることだと私は思っている。
手宮公園の風景だけでなく、きっと小樽のいろいろなところに、時間の流れを感じられる場所があるのだろう。
(かずと)
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※本記事の内容は2020年8月時点の情報に基づいたものです。
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写真:眞柄 利香