入船陸橋

 入船陸橋は、入船本通りをまたぐ様に架けられている。写真では5の数字が読み取れるが、南小樽駅側から1-6の番号が振られている。写真の右側には6番目の鉄橋がある。入船陸橋は、写真に写る6倍にも及ぶ長さがあるということなのだ。

 入船陸橋の歴史は北海道の鉄道橋梁最古の歴史を誇る。明治13年(1880年)官営幌内鉄道が開通した時は木製の陸橋が架けられていた。弁慶号の試運転時、初代入船陸橋の上で止まって記念撮影をしている写真は特に有名である。

 その木製陸橋は、明治18年(1885年)傷みが激しく橋脚がレンガで改築されている。山側の橋脚は明治38年(1905年)小樽中央駅(現在の小樽駅)と小樽駅(現在の南小樽駅)が繋がった時に改築され、海側の橋脚は明治43年(1910年)、手宮線が複線化した時に改築されていると記録されている。

 また、鉄橋通し番号1.2のあたりの橋脚は、明治18年(1885年)に改築されたものをそのまま使っているようだ。それがわかると北海道内最古の鉄道橋脚という事が確定する。どちらにしてもレンガ製の橋脚が、一世紀の時を超えて未だ現役で働き続けている事実は変わらない。

 写真の海側から見た鉄橋は、昔ながらの鉄道鉄橋に多い赤錆色。写真の裏側にあたる山側はダークグリーンに塗装されている。古びたレンガ橋脚と赤錆色の鉄橋はよく似合う。撮り鉄にとっては、最高のロケーションの一つではないかと思っているのだが・・・。

 この入船陸橋、私の自宅近所という事もあり、せがれの幼少期の早朝散歩、愛犬との散歩でよくこの下をくぐっていた。また、この橋脚のすぐ横にはこれまた真っ赤な「末広稲荷」の祠が祀られている。「末広稲荷」は明治17年(1884年)に鎮座しているので、このレンガ橋脚より古いという事になる。

 夏の夜、自宅ベランダを開けていると、直線で100m程度離れている入船陸橋を通過する列車のガタンゴトンという鉄橋特有の通過音が、テレビの音をかき消してしまうほど聞こえてくる。我が家ではその列車通過音が、小樽の短い夏を表しているのである。

(斎藤仁)


※本記事の内容は2020年7月時点の情報に基づいたものです。