歴史を感じる海景色
「小樽って、何があるんだろう?」札幌の自宅から小樽商大に通うことになった4月の私はそう思っていた。地獄坂のような街中から見える海が小樽らしい海だと思っていた。
そんな毎日を過ごしていたが、6月のある日、父に勧められて、母と鰊御殿へ観光に行くことになった。
小樽駅からおたる水族館行のバスに乗り、私と母は鰊御殿へと向かった。
普段、小樽駅と商大の間しか行かない私にとって、駅を出て左側の道はまったく未知の世界だった。
しばらくの間、昔ながらの住宅街をバスが進む。終点のおたる水族館前のバス停に着いた。人々とは逆の方向に私たちは向かった。
観光客で賑わう海の家を抜けると、高い崖の上にひとつの建物があった。隣には海。私たちは地獄坂よりもきつい勾配の短い坂を上り、頂上へたどり着いた。崖の上から海を見た。そこには一面に青い世界が広がっていた。
空と海の青、そして遠くに見える小樽市内。こんなに目いっぱいに海を見たのはいつ以来だろうか。そんな思いを胸に、写真をいくつか撮って鰊御殿内に入った。
中はとても広々としていて、木と畳の香りがどこか懐かしい気持ちにさせてくれた。現在では考えられないほど急で、はしごのような階段を上ると、窓の向こうにさっき見た広大な海が見えた。
再び1階に戻り、展示物を眺めていると、だんだん小樽の歴史が見えてきた。明治30年頃、小樽で大量の鰊が獲れていた。この鰊御殿もその鰊漁をする漁師のために建てられたものである。小樽の繁栄は鰊のおかげなのだ。そんな鰊も次第に獲れなくなったのだった。
私は昔、小樽が鰊で栄えていたことを知らなかった。鰊御殿を出て、再び見た一面の海は、かつての人々の暮らしを感じられる海になっていた。
「小樽には暮らしの近くに歴史がある。」今なら、4月の私にそう答える。何も、鰊御殿の海だけでない。街中にも歴史は隠れているはずだ。小樽とは、現代で過去の人々と繋がることのできる街なのである。
(マナミ)
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※本記事の内容は2018年7月時点の情報に基づいたものです。
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