簡単なタイムスリップ
小樽駅からすぐ近くの都通りというアーケード商店街。レトロな雰囲気を漂わせる、少し薄暗い場所だ。閑散とした静けさと涼しさが、通りの外とは対照的で、別世界であるように感じさせる。そんな異世界に私のお気に入りの場所は存在する。
アイスクリームパーラー美園である。
大正8年創業の老舗喫茶だと聞くと、空気に圧倒されて、なんでもない動作にも作法を意識して、居づらいような場所を想像しやすいが、ここはまったくそんなことはない。というのも、客の談笑や、遊び心が店内に広がっているからだ。
店内に入ると早速目に留まる、赤く細い階段と、その両脇の壁に並ぶ数々の記事。今までにお店が紹介されてきたような記事が貼ってあるのだ。お店の笑顔と記憶が残されている階段を上り終えると、タイムスリップは完了だ。
店内では、昭和や大正時代のようなレトロな椅子や机、置物を照明の灯りがオレンジ色に照らしている。席に座り、辺りを見渡すことに夢中になっている私に、年季の入ったメニューと、お冷が通される。
メニューに目を通すと、案の定全ての商品が漢字で表記されていた。メニューにも時代を感じさせるような遊び心があり、更にワクワクした私は意気揚々と、人気メニューである符鈴伯福栄こと、プリンパフェを注文する。
すると、どうやら数量限定だったようで、その日はもう売り切れてしまっていた。事前に下調べをしていたにも関わらず、数量限定であることを忘れていた。そこで私は、夏季限定メニューである軟多手心愛須薄焼皮こと、ナタデココアイスクレープを注文した。
美園でしか食べられない、どこか懐かしさを感じさせるようなアイススイーツに満足した私は、少し談笑も交えながら会計を済ませた。次こそ、符鈴伯福栄を食べるぞという強い決意と共に、また歴史のつまった階段を下りる。
こういった、何度来ても初めて来たときのように、遊び心や工夫にハッとさせられ楽しめる場所が、小樽には存在する。
(D子)
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※本記事の内容は2018年7月時点の情報に基づいたものです。
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