吉川陶器店

 吉川陶器店は明治39年(1906年)創業、佐々木銃砲店が閉店した今、花園銀座商店街で一番古い小樽の老舗陶器店である。創業の地は現在地より500mほど札幌寄りの、花園グリーンロードあたりだったと、四代目社長の吉川慎一さんが教えてくれた。

 ちなみに私は、吉川社長に対し愛情を込めて慎ちゃんと呼ばせていただいている。付け加えると、私を含めて多くの年下商店街若旦那衆もなぜか慎ちゃんと呼んでいる。

 この慎ちゃんから、曽祖父、祖父、父と直系で四代続いている吉川陶器店の現在はというと、花銀の本店は慎ちゃんと弟さんで仕切り、産業会館名店街支店には、齢80を超えたお母さんが店番を務めてらっしゃる。会館内にあるシニアサロン「杜のひろば」の会員の皆さんの憩いの場となっているようだ。

 私は夕方4時頃になると、店番交替で花銀から産業会館に向って、早足で肩をすぼめてちょこまか歩いている慎ちゃんの姿を度々目撃している。

 慎ちゃんは、老舗の旦那衆ということもあり、地元の花園銀座商店街をはじめ、小樽市商店街振興組合連合会、小樽青年会議所、小樽南ロータリークラブの要職を歴任している。現在も小樽市内に多数加盟店があるオタルンカード事業協同組合のトップ、理事長を務めている。

 亡くなった先代社長のお父さんも、私の青年会議所、ロータリークラブの大先輩で、大変お世話になっていた方だ。

 昨今の小樽観光の流れに沿い、店頭には中国語をはじめとする多数の外国語表示による商品紹介がディスプレイされている。慎ちゃんに、外国人の売上は右肩上がりなのと聞いたことがある。答えは、残念ながらなかなかそうでもないとの事。買ってくれても数百円のお土産程度だと教えてくれた。

 インバウンドの観光客も日本製品の爆買いから、日本の伝統文化を体験、学習という方向に向いているという。元々陶磁器は中華文化の影響を多く受けているのであるが、日本独自の製法、製品を日本全国各地で数多く生み出している。どんな形であれ、小樽の老舗が頑張っている姿を見るのは、嬉しいことである。

(斎藤仁)


※本記事の内容は2019年3月時点の情報に基づいたものです。