小樽の日陰
「疲れたー」「また明日ね~」「次はどこ行く?」
そんな声が聞こえてくるのは小樽駅前である。小・中学生、高校生や大学生などの学生はもちろん、社会人や外国人観光客など多種多様な人々が利用する小樽駅は、賑わいが収まることはない。
私が小樽商科大学に入学してまもない頃、地元から遠く離れた地で友達もなかなかできず、1人寂しく小樽駅に向かって歩いていた。雪解けもまだ不完全で、少し冷たい風が吹いていた。放課後ということもあり、日が沈んでしまい周りはもう暗い。賑わいある小樽駅とは対照的に、私の心は少し孤独で寂しかった。
小樽駅前の国道を渡ろうと思い、歩道橋の階段を登り始めた。歩道橋を渡っているとき、何気なく道路の方を見ると、その景色の美しさに私は感動した。街灯で照らされた道路の中を、光が走っているのだ。普通に見ると、ただの車通りの多い道でしかないのだが、そのときの私の心には、なぜか深く刺さった。
それ以降、あの感覚をまた感じたいと思い、何度かその場所を訪れたが、あのときほどの感動を感じることができなかった。もしかしたら、あのときの私の中の暗い気持ちが感動を際立たせていたのかもしれない。
小樽は北海道の中でも有数の観光地であり、訪れるべき観光スポットがたくさんあるので、小樽に観光に来る人の大半は、小樽を楽しもうと気分を上げて来ていると思う。しかし、何か嫌なことがあって落ち込んでいたり、気分が沈んでいる人にも、ぜひ小樽に来て欲しい。
そこは、ただ明るい街というだけでなく、どこかノスタルジックで哀愁があり、暗い心も優しく包み込んでくれる。そして、「また明日から頑張ろう」と思えるよう元気づけられるのだ。
私が紹介したのは駅前の歩道橋だが、小樽にはそういった場所がまだまだたくさんあると思う。そのような場所を自分の足で探して歩くというのも、小樽の楽しみ方のひとつかもしれない。
(えんでぃ~)