金久保商店

 金久保商店は、入船十字街から一本小樽側の山側小路を入った、仲眼科医院裏に位置している。創業大正12年(1923年)の老舗質店だ。

 昔から、表通りの質屋は儲からないと言われているが、ここ金久保商店は、セオリー通り裏小路に面している。

 先代社長で現在顧問を務めている金久保兵士郎氏は、私の潮陵高校の大先輩で、いろいろな会合でご一緒させていただいている。ロータリークラブ、潮陵倶楽部の幹事会等。大変可愛がっていただいている間柄だ。

 氏は私が興味を示すと、質屋のいろいろなお話を聞かせてくれるのだ。例えば、質屋で一番大切なのは、鑑定力と市況を読む事、そして大切に商品を預かる事、というように。

 鑑定力はよくわかる。まがい物をつかまされたら、お店の一大事だ。商品を預かることも、質屋と言えば立派な質蔵が想像できる。

 よくわからなかった市況を読む事を聞いてみた。それは、できるだけお客さんから、高値で買い取ってあげたり、預かったりしてあげる。一見、損しそうなのだが、それがリピーターを生む。

 さらに、買い取った商品が市場に出回りそうな時に、何か月、何年寝かしても待つという事が、市況を読むという事の様だ。それを実行してきたので、100年近い年月続けて来られたんだと言っていた。

 サンモール一番街の掖済会病院側に、掲示板がお目見えした。その一つに「へいしろうスケッチクラブ」と書かれた掲示板がある。氏が主宰する絵画サークルで、作品展示を行っている。また、しんきん北海道入船支店ロビーには、氏の作品が毎月、展示されている。
 北海道のロータリークラブ月刊誌の表紙絵を一年間飾った事もあった。

 現在社業は、ご子息重人氏に譲り、前述絵画サークルで絵を描いたり、潮陵記念館コンサート実行委員会の実行委員長として、毎年、日本の名だたるクラシック音楽家を招聘し、コンサート運営の責任者を務め、元気に余暇を楽しんでいるようだ。

 そういえば、質屋は鎌倉時代から続く金融業だと言っていたっけ。

(斎藤仁)