海を走る列車

列車が銭函駅を越えた頃、車内の観光客が「わあっ」と声をあげる。

進行方向右手の車窓一面に海が広がるからだ。
JR銭函駅から小樽築港駅の手前のトンネルに入るまで、線路は海岸沿いに走っている。
その間約10分強、右手には海が広がり続ける。
よく晴れた日には、海の青と空の青とで、車窓が一面青く染まり、圧巻だ。
車内右端に座ると海岸や線路が見えるのだが、左端に座っているとそれがみえなくなって、海だけが車窓に映る。
それを観光客は「海を走ってるみたい!」なんて言う。
素敵な表現で、私はすごく気に入っている。

私は生まれも育ちも札幌で、初めてこの海を走る景色に出会ったのは、小樽商大のオープンキャンパスに参加した時だった。
小樽商大のオープンキャンパスは学生の夏休み中に行われていて、車窓に現れた夏の海は、日射しを反射してキラキラと輝いていた。
私と友人たちは例に漏れず、「わあっ」なんて声を漏らしていたに違いない。
海を見ながら登校するなんて青春だなぁと思い、大学生活に思いを馳せた。

そうして現在大学生活も3年が経ち、今では海の映る車窓には目を向けず、列車内では本を読んで登校することも増えた。
しかし、海は毎日表情を変え、波が高かったり、穏やかだったり、その色もその日によってまったく違う。
時には船が浮かんでいたり、サーフィンを楽しむ人がいたり、カモメが岩場で休んでいたりして、景色に飽きることもない。
それに落ち込んだ時に車窓に広がる海は、悩みをちっぽけなことだと思わせてくれる。

私のなかで、大学生活とこの海を走る列車は切り離せない。
車窓に海が見えた瞬間の観光客の歓声を聞くたびに、どこか誇らしい気分にもなっている。

札幌方面から小樽に向かう手段は、車、高速バスなど多くあるが、是非この海を走る列車に乗ってほしい。
海の見える街小樽へ向かうワクワク感がきっと高まるに違いない、と思う。

(船)