駆け抜けた坂道

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大学にはいって、生活が大きく変わった。その一つが、免許をとって原付を手に入れたことだ。

小樽商科大学は坂の上にある学校で、夏場には汗だくになりながら歩いて坂をのぼる学生も少なくない。そんな学生を横目に、涼しい風をあびながら原付を走らせ、坂をのぼるのは気分がよかった。

ある夏の日、授業が終わりいつものように原付のエンジンをかけ、小樽駅にむかって下る途中、ちょっとした寄り道のつもりで天狗山方面へ原付を走らせた。5分ほど経つと、お店や家が少なくなってくる。10分も経つと、あたりは木々に包まれ、草木の匂いと木漏れ日の中、特に目的地もないまま僕は坂の上にすいこまれていった。

15分ほど走ったところだろうか。突然景色が開け、青空が広がった。思わずエンジンを止め、写真を撮った。学校を出て、10数分しか経っていないのに、まるでどこか知らない場所に旅へ出たかのような感覚になった。

生まれも育ちも札幌の僕が、大学生になって「小樽」という知らない土地に通うことになり、学年にともなって新しい友達が増えていった。今では小樽の友達の家に連泊することが多く、家族には「鉄砲玉」と揶揄されるが(笑)、そんな学生生活ももうすぐ終わりを告げようとしている。

原付で駆け抜けた風景が、あっという間だった学生生活に重なって、今になって考えると寂しい気もする。社会人になったら、バイクの免許を取って、また小樽の坂を走りたいと思う。

4年の秋になって、僕は原付を後輩に譲った。今度はどんな景色が原付と後輩を待っているのだろう。

(隆)