おたるさんぽ

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 ある日のことだった。授業が1つ休講になり、思わぬ空き時間ができた。季節は春になりたてで、時計を見ると12時を過ぎたばかり。一番ポカポカして気持ちがいい時間帯だ。

 大学の中にこもっているのは何だかもったいないな、と思ったので私は散歩をすることにした。向かった先はずっと気になっていた坂の向こう。「小樽ゲストハウス パスタクラブ」と看板がかかった道を曲がり、上り坂をひたすら歩いた。普段はバスで登校している私には少しつらい傾斜だ。もう少し体力をつけなきゃいけないな、と歩きながら思う。

 しばらく歩くとおしゃれな建物が見えてきた。どうやらゲストハウスらしい。さっきの看板に書いてあった「パスタクラブ」というお店だと気がついた。ちょうどお昼時でお腹も空いていたのでそのまま店内へ。お客さんは私以外に一組しかいなかった。頼んだのはパスタにケーキと飲み物がついてくるランチセット。茹でたてののパスタを食べ、食後のコーヒーを飲みながら少し読書をしたところでまた外へ出た。まだ時間はたっぷりある。このまま学校に戻るのは何だかもったいない気がして、私はまた坂を登った。歩くのはさっきよりも辛くなくなっていた。歩くのに慣れてきたからなのか、それともご飯を食べて元気が出たからなのか。多分後者だったと思う。

 しばらく歩くと開けた場所に出た。目の前には大きな白い建物。マンションみたいだ。きっと商大生がたくさん住んでいるのだろう、というところまで予測して建物の反対側へと振り返ると、そこには爽やかな景色が広がっていた。旭展望台からも小樽を見下ろしたことがあるけれど、それとは少し違う、日常のふとした時に見たくなるような風景だった。ところどころにある家の赤い屋根と、旭展望台を覆う緑と、遠くに見える海の青。爽やかに吹き抜ける風。少しだけ曇っていたけれど、ああ散歩しに来てよかったな、と思うには十分な景色だった。

 文章にするとヤマもオチもない、なんでもない話。だけど、そのなんでもない出来事を楽しく思えるから、小樽は本当にいい街だと思う。

(JN)