小樽市役所
私が小樽市役所を最初に見たのは、小樽に引っ越してきた昭和41年初夏、商大通り緑ヶ丘の間借り先から、現在の水道局の場所にあった、小樽市民病院を目指して母親と歩いていた時であった。
また、土地勘のない母親は誰から聞いたのか、商大通りから朝日通りを抜け、紅葉橋を渡って行ったら近いと教えられたらしく、今思えばまっすぐ商大通りを下りて病院を目指した方が楽だったのだが、小樽公園の小山である嵐山を上り下りしての道中を選んでしまった。
紅葉橋を渡り裁判所を過ぎ、ひょうたん池横の坂道を下りている時に
「あれを見てごらん、あの先の大きな建物が市役所だよ」
「わぁ、市役所大きいねえ、美唄と全然ちがうね」
引っ越し前に住んでいた美唄市には2階建以上の建物がほとんど存在せず、一軒あったやまじゅうデパートも2階建だった。もちろん美唄市役所も2階建の昔の学校のような建物だったので、小樽市役所裏側から見えた5階建の新築間もない別館に対するインパクトはとても大きかった。
逆にその時の目的地であった、小樽市民病院の古びた野戦病院???のような佇まいに、またまた驚かされたものだった。
小樽市役所本館は、昭和8年(1933年)築の小樽市指定歴史的建造物のひとつである。当時の建築課長成田幸一郎氏の設計で、創建当時別館が建っている場所には、中庭のテニスコートを囲んで、倉庫、事務室があったそうだ。
そこを潰して、地下1階地上5階建の別館が昭和30年代後半に完成している。パソコンもない時代、20万都市の行政一般を本館のみで約30年にわたり続けていたことになる。
現在は本館、別館、消防庁舎、東山中跡に教育委員会、貯金局跡に分庁舎、第三ふ頭基部の北海道博覧会テーマ館跡に港湾部等、市内各所に行政機関が点在している。
本館は、階段、トイレ、ステンドグラスと見どころ満載の歴史的建造物であるが、かの大ヒット映画「ラブレター」では小樽厚生病院として使われていた。2階の廊下は時代を感じさせる雰囲気満点の佇まいである。
時間が許す時、市役所に寄って、ぐるりと一回りしてから、新しい地下食堂でランチでも食するのも一興かもしれない。
(斎藤仁)