旧三井銀行小樽支店
北のウォール街交差点、ホテルヴィブラント(旧拓銀小樽支店)隣に、コインパーキングを挟んで、昭和2年(1927年)築の旧三井銀行小樽支店がある。ここを設計したのは、工部大学校造家学科(現東京大学工学部建築学科)第一期卒業生4名のうちの一人、曽禰達蔵(そねたつぞう)博士だ。
明治以降、日本の建築界をリードしたこの卒業生4名のうち3名が、小樽に作品を残している事はガイドブック等に必ず掲載されている紹介文の一つだ。また、3名が残している地は、全国津々浦々、小樽しかないことも付け加えておく。
さて、この旧三井銀行小樽支店、小樽に最後まで残った都市銀行であった。名称も太陽神戸三井⇒さくら⇒三井住友、更に支店から出張所に格下げされても、小樽の地にとどまってくれた。私は三井銀行時代から、利用している顧客の一人だ。
ここは、2002年(平成14年)11月をもって残念ながら閉店されたが、市民の要望により、小樽駅前にある長崎屋小樽店内にATMが設置され、現在も小樽市収納代理金融機関のひとつに含まれている。
その後すぐに、札幌の「白い恋人」で有名な石屋製菓の所有になり、ここをエントランスにした、コンサートホールを裏側にあった大きな駐車場跡に、建設するという報道が流れたが、10年以上の歳月が流れた今も、まだ実現していない・・・。
昭和30年代にここで働いていた女性に、お話しを伺ったことがある。2階まで吹き抜けで窓辺に回廊がある、この時代特有の銀行建築だったが、とにかく夏の暑さと冬の寒さに閉口だったと、小樽初の鉄筋コンクリート造りとしては、意外とも思える、思い出話をしてくれた。回りが、拓銀、第一、三菱などの都市銀行だらけだったので、お弁当を忘れ制服のまま外に食事に行くときは、気を使ったとも言っていた。
10年以上鉄扉は閉められたままだが、近いうちの有効利用を期待しているのは、私だけではないはず・・・。
(斎藤仁)