和光荘

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高校に入学してから、一年間、最上町から潮見台の潮陵高校まで歩いて通った。2学年上に歩いて通っていた姉がいたからである。入学式の日、姉に「どこ通って学校行けばいいんだべ?」と尋ねた。

すると姉は「奥沢を抜けて、和光荘の前を通るのが一番効率的だよ、私はいつもそれだから」と教えてくれた。

「和光荘?」

それが和光荘という建物を初めて聞いた時のことである。○○荘と言えば、アパートと相場が決まっていると思っていた。小樽が観光都市になる前のことである。まさか、ヨーロッパ映画に出てくるような、大きな洋館(表側)が小樽にあることなど、昔の小樽の高校生には、想像もできなかった。

「ここは誰の家なの?人住んでいるの?」
「そんなこと知らないわよ、そういえば北の誉の関係だって聞いたことあるわ」
「なんか、蔦がからまって不気味な感じだよね、幽霊屋敷みたい」
「カーテンはいつもかかっているよ、そういえば人の気配もないわ」
そんな会話を姉弟でした記憶がある。

潮陵高校の卒業アルバムクラス写真を、和光荘前で写す組が必ずあった。ちなみにわたしはその恩恵に与れず、違う場所で写した組だった。

和光荘は大正11年(1922年)築、北の誉酒造の2代目、野口喜一郎氏の自邸である。小樽市の歴史的建造物に指定されている、大正天皇、昭和天皇がお泊りになった由緒ある建物だ。未だ一般公開はしていない。

縁あって昨年秋、和光荘・大広間で開かれた小樽ロータリークラブ主催大震災復興イベント「クラシックの夕べ バイオリン三重奏」を見に行くことができた。

外階段を上がり、一階玄関に入る。上がっているので実質2階に来たことになる。更に中の階段を上がると、件の大広間に出た。この大広間にはタイルで作られた噴水池があるではないか!!!
分厚い絨毯に豪華なシャンデリア、外を見ると日本庭園が広がり、渡り廊下でつながる別棟は和風造りのようだ。

現在の潮陵高校は和光荘側とつながっておらず、通学する生徒も見ることはできない。今年、NPO小樽ワークス主催のアートプロジェクトvol.4が和光荘を会場に開催された。卒業写真はここで撮れなかったので、シーちゃんと写真を撮ってきた!!!

(斎藤仁)