祝津パノラマ展望台の冬

Shukuzu_Panorama_Observatory_winter

「どっか〜ん!」
そう見えた。
「ざっぶ〜ん」でも「ざっば〜ん」でもなく、「どっか〜ん!」

真冬の海獣公園に大波が襲いかかった。その迫力はすごかった。ただし、これは本物ではない。YouTubeで公開されている動画だ。

海獣公園は、祝津海岸、おたる水族館の中にある。雪のない季節、水族館を訪れるたびに必ず行く海獣公園。海獣ショーやアザラシたちのつぶらな瞳を見ずして水族館からは帰れない。

動画の中では、その和やかな場所がすっかり波に飲み込まれている。いつも見ている海獣公園とはまったく違う表情。ショーのやっていない真冬の日常風景。

これは絶対見たい!

そう思ったものの、もちろんそんな悪天候では、海獣公園が開園している訳がない。それこそ見ている人間の方が危ない。

でも見たい!

「そうだ!少し遠くからなら天気の悪い日でも見られるのではないか?」
「パノラマ展望台だ!」

 

・・・その日は夜明け前から猛吹雪。昼になっても吹雪はやまない。
はたと思い出した。
「あ、海獣公園に波が押し寄せてるかも…」
思いついたらすぐ出発。これでもかと言うほど厚着をして防寒対策もばっちり。いざ、祝津へ。

小樽の中心部から手宮を抜け、高島を通りすぎ、トンネルをいくつかくぐり抜ける。右手には漁港、さらに進むと赤い屋根の鰊御殿や白と赤の縞模様の日和山灯台が見えてくる。おたる水族館の駐車場を、後ろ髪を引かれながら通り過ぎる。急な坂道を上り、祝津パノラマ展望台に到着。
市街地に40センチほど積もっていた雪は、展望台の駐車場にはほとんどない。暴風で車がすべて吹き飛ばされたようだ。車の外は予想通りの猛吹雪、降りようとしても風にドアを押し返される。これはもしや、念願の「どっか〜ん!」が見れるのか?

展望台の端まで行き水族館の方向を見ると、海獣公園には大きな波が覆い被さっていた。波がスローモーションのようにゆっくりと引いては、トドたちのダイビング台に当たって大きな飛沫を上げて砕け散って行く。夏にアザラシたちが和やかに過ごしていたプールにも白い大波が押し寄せている。
なんという迫力、自然の力強さ。これが北海道の冬、小樽の冬。

夏至の頃には海に沈む夕日が見える祝津パノラマ展望台。夕日や満月が映る穏やかな海は素晴らしい。が、冬の荒々しい祝津の海も、一度は見ておきたい絶景だ。

(まがらりか)