張碓橋

 張碓橋は旧国道5号線に架かる、昭和8年(1933年)竣工の橋である。平成18年度(2006年度)日本土木学会選奨土木遺産に認定された由緒ある橋なのだ。「昭和初期の札樽国道開削の歴史を伝える唯一の土木遺産。北海道最初の鋼製プラット型バランスドアーチ橋」が受賞理由である。しかし、現在はほとんど通ることはなく人目に触れる事もない・・・。

 私が免許を取った昭和52年(1977年)頃の国道5号線は、征里交差点から張碓トンネルまでは片側1車線で地形に沿ってR40-50の小さなカーブがいくつも続き、冬場は大変な難所であった。

 現在はそのカーブをショートカットし、橋をいくつも架け片側2車線で大変走りやすくなっている。それでも相変わらず冬場は、事故の多い難所であるのだが・・・。

 当時、張碓トンネルを抜け、景勝園のあった張碓峠を越え、左側に張碓の街並みを見ながらこの張碓橋を渡るとすぐ左側に張碓の市街地に下りる道があった。ちょうど札樽バイパスの高架下に高校の同級生が住んでいたので、免許取り立ての頃は、よくこの道を通り遊びに行った。帰りはこの橋を望みながら帰路についたので、赤いアーチ橋を良く見ていたものだった。

 最近の橋は道幅が道路と同じが普通であるが、ここを含め当時の橋は道路に比べて幅が狭く、けっして走りやすいとは言えなかった。バスや大型トラックと橋上ですれ違う時は、大変緊張したものだった。逆にいうとバスやトラックの運転手さんにとっては恐ろしい橋だったと想像できるのだが・・・。まあそんな道路状況がそこかしこにあった時代であった。

 1980年(昭和55年)、この張碓橋をショートカットした、片側1車線だが現在の大曲が開通したので、張碓橋を車で通ることもほとんどなくなってしまった。ドライバーとしては、大変走りやすくなっていったのである。この張碓橋も国道から市道になり、旧国道と呼ばれるようになった・・・。

 週に何度も銭函、手稲方面向かうのに大曲を通るのだが、張碓橋を通る事はなかった。今回この写真を撮りに旧国道を通ってみた。写真は小樽側から札幌側を写したものである。札幌側欄干に選奨土木遺産のプレートが貼られていたが、なんとも寂しげな佇まいであった・・・。

(斎藤仁)