火の見やぐら
「火の見やぐら」とは、火災の発生をいち早く知らせるために建てられたやぐらで、一番上に半鐘がつけられ、出火した方向、距離などを、半鐘をたたくことによって知らせたものです。「望楼」という言い方もあります。
元々は、1658年に、江戸幕府が官営の消防団として江戸に「定火消(じょうびけし)」を置いたとき、火消屋敷に建てられたのが始まりで、それから昭和初期までに、全国のほぼ全域に広まったそうです。「火事と喧嘩は江戸の華」といいますが、ほとんどが木造建築の日本では、火事の延焼をいかに防ぐかが大問題だったんですね。
この火の見やぐら、建物の高層化、電話の普及などにより、その役割を終えましたが、まだ姿をとどめているものも結構な数あるようです。
小樽で火の見やぐらといえば、小樽運河の浅草橋の交差点に建つ観光施設、「出抜小路」のものを思い浮かべる方も多いと思います。これは、もちろん最近建てられたものですが、昔、実際に火の見やぐらとして使われていたものも残っています。
花園にある「寿司・天ぷら・うなぎ 庄坊番屋」というお店がありますが、ここは、元は小樽消防署の本部が置かれていた建物で、屋上に見える火の見やぐらは当時からありました。昭和26年に建てられたそうです。ちなみに、お店の名前も「消防」にちなんでつけたそうです。
また、手宮の十間坂、梁川通りの都会館の火の見やぐらも、昭和中期頃に建てられ、当時は、その役割を果たしていたものでした。
住之江にも同じようなものがあり、私はてっきり、火の見やぐらとして実際に使われていたのだろうと思っていました。しかし、消防本部に尋ねてみたところ、住之江のものは30年ほど前に建てられたもので、実は、火の見やぐらとしてではなく、消火活動を行ったあとのホースを干すために作られたのだそうです。上に半鐘らしきものがついていて、それらしい格好をしているので、だまされてしまいました。
そんな勘違いも楽しい、時代を伝える火の見やぐら。全て巡ってみるのも一興ですね。
※写真は住之江のものです。
(川)