ふるきあたらしき

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昭和2年創業の、「寶川」で有名なこのお店。
初めて見たとき、漢字が読めなかったのはご愛嬌。

みんなの目に留まる大きな蔵を構えるほうではなく
今日は本店におじゃまする。
小樽に通って3年目、こぢんまりしたこのお店にくるのは
実は初めてだったりする。

オレンジのはっぴを着たおねえさんの、笑顔のお出迎え。
隣の試飲場にも人がいるのかな、「いらっしゃいませ」の声が
木造の店内にやさしく響く。
寒さでこわばったからだが、じんわり暖まり温まる。

歴史がにじみでる創業当時の看板
ちょっぴり色あせた紅色ののれん
主張しすぎない、包み込むような木のにおい。
おんなのこの日のひな壇と
やさしく照らすたんぽぽ色の照明。

歴史的建造物に指定されたそんなお店の中で
まごころこめて醸造されたお酒と
あったかいお茶をいただく。

たったこれだけ、これだけども
こんな贅沢なことってあるのかな
ちょっとお疲れのこころまで、じんわり暖まる温まる。

一世紀以上、たいせつにたいせつに
みんなに愛され続けてきたこのお店。
今日明日もその場所で変わらずに、わたしが感じたように
ひとびとはあたたかい気持ちになるのだろう。

 

スクラップアンドビルドは簡単だ
デジタルサイネージのサインボードは画期的
ニューオープンの高層ビルで、ティーを飲むのもオシャレかも。
もちろんこれらもいい。

しかしながら
あのあったかさは、ふるきを尊ぶここでしか味わえない。
あの包み込む空間は、年月を重ねてこその賜物だ。
手放すのではない、大切にし続けるからこそでる味がある。
わたしもきっと、こういう人間になりたい。

社会人になるまで、あと一年かぁ。
そうだ、都会のコンクリートジャングルに疲れたときは
ここに帰ってこよう。

(彩花)