紅葉橋の坂

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商大から地獄坂を下り、小さな公園が見えて来たところで右に逸れて下って行くと見えてくるのが紅葉橋の坂である。

私はこのルートで商大入学以来、何度か紅葉橋の坂を訪れている。
私は一年生の頃から商大に来る外国人留学生の手伝いをする学生チューターを行っている。今までに二人の留学生を担当してきた中で、担当の留学生が小樽に来てから必ず行かなければならないのが小樽市役所である。
商大正門で待ち合わせ、冒頭のルートで紅葉橋の坂まで行き、紅葉橋の坂経由で行くのが今となっては私にとっての市役所への馴染みのルートであるが、1人目の留学生と最初に小樽市役所に行くまでは紅葉橋の坂など知る由もなかった。

 

大学生となって初めての夏休みのちょうど中盤だっただろうか、韓国人の担当の留学生と大学正門で待ち合わせ、小樽市役所に行き、彼の住民票の発行などの手続き行う手伝いをすることになった。
彼は小樽に来て数日であり、市役所までの道のりはもちろん知らないので、私が案内することになっていたのだが、その頃の私も商大から小樽駅の道のり以外殆ど無知であったので、携帯の地図を頼りに、半ば無事に市役所にたどり着けるか不安になりながら歩いていた。
地図を頼りに歩いていると、なんだか古めかしい橋が見えてきたではないか。そう、それが紅葉橋である。橋の下には於古発川という、一風変わった名前の川が流れている。ちなみにこの川の名前はアイヌ語由来らしく、読みは「おこばちがわ」である。
そして、小さい紅葉橋の向こうの少し急な坂が、橋の名にちなんだ名を持つ紅葉橋の坂である。
橋の上から川の下流側を見ると、左手にとがった三角屋根の木造2階建ての、同じ形の民家が3軒並んる。眺めていると、なぜか懐かしさがこみ上げてくる不思議な空間であり、それまでの住宅街の景色から一変して、なんだか古めかしく、それでいて整った美しさを感じさせる、そんな光景に私は一瞬立ち止まってしまった。

すると一緒に歩いていた留学生が、

“I’m so happy that I can live and study in such a beautiful city as Otaru!!”

と興奮気味に言った。(記憶が定かではないので多少違うところもあると思うが。)

 

小樽という街が何故人種を問わず人々を惹きつけ、魅了しているのかが少し分かった気がした。

何気ない空間の中にある感動。これが小樽の魅力なんだなあ。

(勇)