思い出のあんかけ
おばあちゃんが小樽に住んでいたので、私は幼い頃からよく家族で小樽に行っており、馴染みが深かった。午前中に到着し、みんなで昼ご飯を食べるのがお決まりのパターンである。だがおばあちゃんの足が悪いため、家に出前のお寿司かお弁当を頼むことがほとんどだった。
私が小学生ぐらいだったある日、いつも家の中で同じものを食べているため、ちょっとみんなで外に出てごはんを食べに行ってみることになった。おばあちゃんの足が心配だったが、家の中にいてばかりよりもたまには外に出た方が良いだろうとなり、外食を決めた。
「なんとなく中華を食べたいね」と話していると、おばさんが都通り商店街にある中華食堂を知っていたので、そこに行くことにした。店の名前は「桂苑」。小樽で有名なあんかけ焼きそばが一番人気であるようだった。見た目は商店街の雰囲気になじんだ昔ながらの食堂であり、7名で入ると一番大きなテーブルに案内された。
私は札幌の地元でよく家族と中華を食べに外食をしていたが、チャーハンが好きでそれを食べることの方が多く、あまり外であんかけ焼きそばを食べたことが無かった。何を食べようか迷ったが、この店の一番人気であり小樽のソウルフードという言葉に押され、あんかけ焼きそばを食べることにした。私の家族とおばあちゃん、おばさんのほとんどがあんかけ焼きそばを注文した。待っている間は、店を切り盛りするおかみさんの「麺一丁!」の声がたくさん聞こえてきたのをよく覚えている。
そして出されたあんかけ焼きそばは、ボリュームたっぷりでとてもおいしかった。量が多くても飽きずに食べられ、私を含め家族みんなすぐに完食した。そしてふと横を見てみると、なんと普段あまり食べないおばあちゃんもあんかけ焼きそばを完食していたのだ。これに家族全員で驚いた。おばあちゃんは「ペロッと食べれちゃった」と笑って言っていた。私はこのとき、「ああ、外に出てみて良かったな」と思った。
大学生になって小樽に毎日通い、またこの店を訪れた。おばあちゃんは私が中学生の時に亡くなってしまったが、今でも桂苑のあんかけ焼きそばを食べると、あの時のおばあちゃんの笑顔が蘇る。
(さかな)