無秩序と坂

19%の標識を見たのは夜中の3時頃、無秩序な坂の上だった。
ろくに整備もされていない激坂に、無理やり作ったような古民家が立ち並ぶ、ある小樽の一角でのことだ。
僕は部活の集まりで、商大とは駅を挟んで逆方面にある小さな古民家に泊まっていた。
そこはぼろさを趣で取り繕ったような、異常に小さいテレビが付属してある良い感じの場所だった。
そこでの夜は僕にとって特別なもので、大学特有の雰囲気と楽しさにあてられて(あとちょっとコーヒーも飲んだから)日付が変わっているのにまったく寝付けないほどだった。
あまりにも目がさえていたので、僕は「散歩でもしようかな」と思って、とりあえず外に出てみた。
玄関の扉を開けると澄んだ空気と程よく明るい空が僕に「歩け」と言っているような気がした、ということにして、古民家周辺を中心に散策してみることにした。
その一角は古民家の段々畑みたいになっていて、縦道はずっと坂で、横道は傾斜こそなかったけれどしばらく歩くと密集した家々に道をつぶされるか、気づくと林と草原の中間みたいなところに出て進めなくなるだけだった。
でもたまに上下の段をつなぐような、かつて階段だったものみたいな段差もあった。
それは存在すらわからないこの街のゴールまで僕を連れて行ってくれるような気がして(これは本当に思った)道なき道を進みつづけた。
気が付くと少し大きい縦道に出ていて、そこには何十年も前に廃校になったであろう小学校が道路沿いにたっていた。
僕は人生で美しい景色とかきれいな桜を眺める等の行為に意義も感動も感じたことがなかったけれど、その廃校を見上げているとなんとなく時代の変遷を感じると同時に、微妙な非現実感が相まってかすかに高揚した。
そのまま坂の頂上まで登ってみると古民家の密集地とは逆側の坂を見下ろすことができた。
見事なほど普通の住宅地だった。
どことなく「斜陽」と「小樽」が僕の中で結びついて、これが僕の思う本当の趣で、僕の思う本当の小樽らしいというのはここがゴールかなと思った。
振り返ってみるとそこには坂の傾斜を表す標識が立っていた。
19%。
たしか地獄坂が10%だった気がする。
(塚)
—
※本記事の内容は2022年7月時点の情報に基づいたものです。
—
写真:眞柄 利香