高架の横のラーメン屋
その昔、
花園の東映映画館の横の小道に
大盛りで有名なラーメン屋があった。
どれも量が多い。
3杯喰うとタダなる。
デカいツボにラーメンが入った
エベレストラーメンっていうのもあった。
僕は学生で喰い盛りの頃だったから、
友達を連れて興味深々行きましたね。
もの凄く狭い店で、店のオヤジがやたら威勢良かった。
とりあえず、「焼肉ラーメン」ってのを頼んでみた。
すると、僕の横にいた知らないお兄さんも
「焼肉ラーメン」を同時に頼んだ。
焼肉ラーメンってね、
豚の生姜焼きのような焼肉が乗ってるラーメンなんですね。
出来上がってきた。
焼肉がそれなりに乗っかっている。
これだけ肉を喰えば腹一杯になる。
これはお得だなって思った。
そして、何気なく、同時に頼んだ横のお兄さんのを見てみた。
ビックリした。
肉の盛り方が全然違うんだも。
向こうは、てんこ盛り。
こっちは、さらっと盛り。
初めて入った店だったけど、これにはさすがに文句を言った。
「おじさん、隣の人とずいぶん盛りが違うんだけど・・・」
すると、オヤジは言った。
「お前、このにいさん、この店に何回来てると思ってるんだ。
お前もあれくらい盛ってほしかったら、常連になれ」
僕と友達はこの言葉に燃えてね、それから通ったなあ。
そして、オヤジとも親しくなったある日、突然、
てんこ盛りの焼肉ラーメンが出てきた。
「やった!!! 認められた!!!」
嬉しかった。
夢にまで見た常連にしか出てこない、
てんこ盛りの焼肉ラーメン!!
さっそく、張り切ってワッシワッシと喰いましたね。
そして・・・・・約30分後。
もう腹に入らず、
喰うことができない焼肉が入ったドンブリを前に、小さな声で
「ゴメンなさい、これ以上食べれません」
とオヤジに謝る俺がいた。
それでも、友達は根性あったなあ、全部喰ったも。
そして、そいつは店を出た途端、店の前で吐いていた。
そのラーメン屋はもうありません。
(みょうてん)
出所:おたるくらしアーカイブ