地獄坂と日常
小樽の景色は素朴で穏やかな日常が見える、ただし「目を向けようとすれば」。
『地獄坂』、初めて目にした時は驚いた。登れるものなら登ってみろと言わんばかりの地獄坂の標識がある。ここがスタートか。先の見えない坂を前に、商大というゴールが本当にあるのか心配になる。
いざ通学!経験したことのない傾斜を一歩ずつ踏みしめる。
じりじりと太陽が照る。すぐに緑の木が茂り、ヒューヒューと感じる風が背中を押して応援してくれているようだ。歩き進めると、楽しそうに遊んでいる2匹のネコを見つけた。この子たちは坂をつらいものとは思ってないのかな。ネコの目線だったら絶壁に感じそうだな。
暑さと疲れでそんなどうしようもないことしか考えられなくなってしまいそうだ。
おっと、気づかないうちに猫背になっていた。よいしょ。背筋を伸ばして上を向く。すると目に見えたのは緑色のでっかい山。「あれ?今って登山してるんだっけ?」
見えた景色がそう錯覚させる。と、同時にドーンと疲労を感じる。
どうにか元気を振り絞り、歩みを進める。
これから数年間よろしくお願いします、地獄坂さん。自分に暗示をかけながら登る、登る、登る。ぽたぽたと汗をたらしながら登る。
やっとの思いでたどり着いた商大の校門。そして歩いてきた道をそっと振り返る。
「青い空、白い雲、緑の木、生活感のある住宅、街の建物、そして遠目に青い海」
見えるはずもない、自分の足跡さえも見えた気がした。ただ美しいと思った、疲れを忘れて。
たしかに、ロープウェイで山に登って見る夜景もきれいだ。
でも、汗を流してたどり着いた「身近」な景色、自然をそのまま感じることができる「素朴」な景色もとても綺麗だと思った。
歩きスマホ。みんなが下を見て歩いている時代。
たまには顔を上げて身近に目を向けてみるのも良いと思う。時に振り返ることも。そうすれば感じられる「日常」。自分もこの穏やかな景色の、この日常の一員なんだと感じさせられる。それが小樽だ。
『上り坂あれば下り坂あり』 融通の利かない辛い日々もいずれは終わる。
マスクの下は笑顔をキープ。背筋伸ばして前向いて、今日も近所の人たちに挨拶をする。
(シュン)
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※本記事の内容は2021年7月時点の情報に基づいたものです。
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写真:眞柄 利香