小さな幸せと消火栓

小樽って、歴史的建造物とか、風情ある街並みとかに目が行きやすいんですけど、意外と身近なところにも、小さな発見があるものなんです。

私が小樽に引っ越して間もない頃。街を散歩していると、青やら黄色やら、やけにカラフルなものがぽつりぽつりと視界に入ってきます。それは消火栓でした。

消火栓といえば、私たちが目にするものは赤色のものばかりでしょう。
しかし、小樽市内の消火栓は珍しいことに、赤・青・黄・黄赤・青赤という、全部で5種類もの色が存在するのです。

では、あちこちにある消火栓は、なぜこんなにカラフルなのでしょうか。
それには高低差の激しい小樽ならではの地形が関係しています。

1974年、市内では大きな火災がありました。
消火の際、同じ配水系等の消火栓から何台もの消防車が水を吸い上げたため、配水管の水量が落ち、水が出にくくなってしまった、ということがあったのです。

そんな経験から、小樽の消火栓には色分けがされ、消防隊は配水系等を瞬時に見分けて消火活動を行えるようになりました。
市民の皆さんが安心して暮らしていけるような工夫がこのカラフルな消火栓たちには施されているのですね。

小樽の消火栓に興味を持ったからか、私は散歩のことをすっかり忘れて、街の至るところにある消火栓の写真を撮ることに夢中になっていました。
そして、カラフルになった携帯の写真フォルダを見て、私はどこかほっこりとした気分になったのです。

道の端にぽつんと置かれている消火栓。そんな普段では気にならないようなものにまで、まだまだ違った楽しみ方が存在する。私はそこに小樽の街の温かさを感じました。

もしあなたが小樽を訪れたときには、いつもよりちょっと視野を広げてみてください。きっと、意外なものから小さな幸せを感じられるはずです。

(TED)


※本記事の内容は2020年8月時点の情報に基づいたものです。

写真:眞柄 利香