ランプのあかり

小樽を訪れる人のほとんどが立ち寄るだろう場所。それが小樽駅だ。バスターミナルも隣接しており、JRの利用者に限らず空の便の利用者も一度は目にすると思う。駅というのは旅の通過点になってしまいがちだが、そこに魅力と趣が溢れているのだ。

小樽駅、最大の魅力は入ってすぐのエントランスホールだ。旅の際には急ぎのことも多いと思われるが、入ったら顔を上げて窓や改札の上を見上げてみてほしい。ランプがずらーっと並んでいるのが目に入るだろう。

そう、このランプこそが小樽駅特有の落ち着き、温かみ、そして“なつかしさ”を醸し出しているのだ。

このランプが飾られるようになったきっかけは、現駅舎が完成した1934年に当時の駅長が「小樽駅の特色を出したい」との要望を北一硝子に出したことである。まさに今の小樽駅にとってのシンボルとなっている。

実はこのランプは昼と夜とで見せる顔が違う。私が、母と夜に訪れたときにはそのきらめく燈火に感動し、目を輝かせながら見入ったのを鮮明に覚えている。
その綺麗さにうっとりと、硝子に反射してきらきらと広がっていくその明かりを見ていると、初めて訪れる街のはずなのに、どこか“なつかしさ”を覚えた。

長い年月駅を照らし続けるランプであるからそんな気持ちにさせるのかもしれない。
その翌日、地元へと帰るために再度訪れた。前日に見たランプの情景を思い出し、もう一度見上げてみた。すると、明かりが燈っていないランプを見て、初めて色がついていることに気が付いた。

すべて同じ色ではなかったのだ!それぞれ赤みがかっていたり、青みを帯びていたりとまるでステンドグラスのようであった。

きっと観光地がたくさんある小樽に訪れるからには、目的地をしっかりと決めて旅をすることと思う。でも、小樽には何気ない部分にも心を掴まれる魅力が溢れているのだ。

小樽に訪れる際には、ただの玄関口として小樽駅を利用するのではなく、充分に、また存分に小樽駅を味わってみてほしい。

(まる)


※本記事の内容は2020年8月時点の情報に基づいたものです。

写真:眞柄 利香