張碓稲荷神社

 張碓稲荷神社が、今年令和2年(2020年)6月、創祀330年を迎えた。なんと元禄3年(1690年)の創立だという。オタルナイ(小樽)が江戸幕府から村並みと認定されたのが元治2年(1865年)なので、その175年前ということである。

 江戸時代前より、現在の渡島・桧山地方には、多くの和人が住んでいた。そして小樽でも忍路、高島、張碓、銭函、石狩等の海岸沿いに、鰊や鮭を求めて夏の間漁師が居住していた。とくに近場の東北地方の漁師が本州から渡って来たと記録に残っている。

 小樽で一番古い忍路神社の創祀が、延宝2年(1674年)と言われているので、一応これに次ぐ歴史を有することとなる。しかし最初は、航海や漁の安全を祈願しての小さな祠を建てた程度の物だったようだ。

 張碓稲荷神社の由緒書きを読むと、長らく途絶えていたのだが、明治2年(1869年)に再建され、明治8年(1875年)村社に列し、昭和11年(1936年)11月、この場所に遷座したと記載されている。明治以降の篤志家たちのおかげで復活したという事のようだ。

 この神社の存在は、国道沿いということもあり、かなり以前から知っていた。ただ、鳥居も社殿もとてもお粗末な感じだった・・・。そんな風雪に耐えてきた社殿が改修を重ね、平成12年(2000年)、社殿を大改修し、「張碓稲荷神社」と書かれた石柱社号標が新設され、鳥居も付け替えられた。私はこの車の中からもよく見える社号標により、この神社名をはっきりと覚えたわけである。

 北海道神社庁のホームページでは、張碓稲荷神社の例大祭は6月の第二日曜日となっているが、近年は第一土・日曜日に開祭することが多い。例大祭と言っても住吉神社や水天宮、龍宮神社のように多くの露店が立ち並ぶお祭りとは違い、とても小さなものなのである。しかし、地域の人たちにとってかけがえのない歳時記の一つとなっている。

 社殿にて宮司による神事を行い、近所の子どもたちのための露店が数店立ち並び、近年結成された神輿会張和会による神輿渡御、狭い参道がたくさんの人たちで溢れかえる。神輿会、氏子、町内会、PTAが一体となり、張碓稲荷神社例大祭を地域の一大イベントとして大いに盛り上げている。

 今年は、コロナ禍の影響で神事以外は中止のようである。人類の歴史は、感染症克服の歴史でもある。来年以降の復活を地域の人たちと一緒に祈りたいと思う。

(斎藤仁)


※本記事の内容は2020年6月時点の情報に基づいたものです。