跨線橋からみる小樽の表情
小樽駅から国道5号線を南に進み、産業会館のある交差点を右に曲がったところに、富岡跨線橋があります。駅から歩いて通学する商大の学生にとってはいつもの道ですが、なかなか面白いところだとわたしは思います。
実際に通ってみると気づくのは、橋を上ったところに信号があることです。
確かに「跨線橋」なので線路をまたぐために橋を上るのですが、「下りない」というユニークなつくりになっているのです。
実は下を走る線路もなかなか見事に作られています。道をくぐったばかりの線路は、一本となりの商大通りでは高架になって道をまたいで行きます。
くぐったりまたいだり窮屈そうですが、無理もありません。いまの小樽駅ができたのは1903年ですが、いまの南小樽駅まで線路がつながったのは2年後の1905年でした。さらに、そのときはまだ道路と平面交差しており、現在のように高架になったのは市街形成も進んだ1964年のことでした。そんな歴史が垣間見える大胆な線路を、大胆な通学路からこうして眺められるのです。
もう一つ面白いところですが、ここは商店や観光地の多くある平地と、富岡、緑といった住宅街のある小高い丘をつなぐ橋になっています。「上っても下りない」のはそのためです。
橋の上と下では雰囲気も景色も変わります。下は観光客も多く、お店もたくさんあるにぎやかで華やかな空間で、遠くには海が見えます。対して上は比較的静かで、住民の暮らしがみえる、山あいの飾らない空間です。
田舎から上ってきて一人暮らしを始めたとき、山の上に住んだわたしは、「小樽って札幌のとなりだけど、静かなまちなんだな」、と思いました。でも、初めて跨線橋を越えて買い物に行ったとき、大きな建物が立ち並び、電車がガタゴトと行きかう様子をみて、別のところに来たように感じました。
おしゃれでにぎやかな小樽。とっても大胆な小樽。対照的に、気取らない面もある小樽。ひとことでまとめるなら、「表情豊か」でしょうか?
(おのぼりさん)
※参考URL
「開通から半世紀―函館本線・小樽~南小樽間のS字連続高架を振り返る」
「運輸開始」『官報』1903年7月2日(国立国会図書館デジタル化資料)
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※本記事の内容は2019年7月時点の情報に基づいたものです。
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